楽によって自律神経は変化します。今回BGMにもこだわってみました。

 

【音楽の自律神経への影響】
自律神経の活動は、音楽によって覚醒と鎮静の両方向に変化することが、非常に古くからのさまざまな研究でわかっています。基本的には、テンポが速くリズムや旋律が複雑な覚醒的音楽では、心拍や筋肉の緊張の増加がみられ、反対に、テンポが遅くリズムや旋律が単純な沈静的音楽では、心拍や筋肉の緊張の減少、皮膚温度の増加、皮膚電気伝導の増加がみられます。2012年にアメリカで行われた、11の研究のメタ解析でも、音楽療法を受けた群は受けなかった群と比較して、音楽療法の後で収縮期血圧と拡張期血圧の顕著な低下と、心拍数の顕著な減少がみられたことが示されています。

【使用した音楽】

<ヴァイオリン協奏曲集 四季>

ヴィヴァルディによって1725年に出版された「和声と創意の試み」作品8という協奏曲集(全12曲)の第一番から第四番が「四季」である。
「四季」を構成する4曲には、それぞれ「春」「夏」「秋」「冬」の標題と、四季の自然とそこに生きる人間の営みを歌った作者不詳のソネット(十四行詩)が付けられている。ヴィヴァルディは、その叙事詩に歌われたさまざまな情景や具体的なエピソードを、ソロ協奏曲の整然たる構成の中で、リアリスティックに描写している。四季の移り変わりを標題音楽のテーマとすること自体は決してヴィヴァルディの専売特許ではないが、協奏曲の枠の中で成し遂げたという点で画期的な作品ということができる。
「四季」の特徴を簡単に記すと、「春」は、第一楽章で新しい春の訪れを迎える喜びが表現され、第二楽章では草原に横たわってまどろむ羊飼いが描かれる。第三楽章では、輝く春の素晴らしい空のもとで、乙女たちも羊飼いもひなびた牧笛の陽気な調べに合わせて踊る。「夏」は、「春」が明るいホ長調で書かれているのに対して、暑さの厳しいいやな季節としてト短調で描かれる。第一楽章は強い日差しに人も家畜もあえぐさまや、はげしい嵐を恐れ不安におののく村人の嘆きが表現されている。第二楽章では、疲れた羊飼いに蝿や虻の群れが襲いかかる場面が描かれている。第三楽章は「夏のきびしい季節」の副題をもち、吹きすさむ嵐、とどろく雷鳴がドラマティックに描写される。「秋」は、豊作の喜びにわく農民たちの祭りの雰囲気や狩りの情景が明るいト短調でいきいきと描かれる。第一楽章の「村人たちの踊りと歌」では村人たちが豊作の祝い酒に酔って、眠り込むまでが描写されている。第二楽章は「眠る酔っ払いたち」の副題をもつ。人々が眠る静かな秋の夜の情景である。第三楽章では、角笛や鉄砲の音、猟犬の吠える声など勇壮な狩りの情景が活写されている。「冬」は、第一楽章で一面雪と氷に覆われた冬の凍てつく寒さ、寒さに歯がカチカチと鳴る様子などが表現される。第二楽章では戸外に降る雨、暖かい暖炉に憩う幸福が歌いあげられており、「四季」の中でもっとも美しい叙情的な楽章といわれる。第三楽章では、氷の上を小走りに行く人が滑って転倒するさまや、春の訪れを先触れする南風と北風の争いが描かれている。

<引用・参考文献>
Loomba RS, Arora R, Shah PH, et,al. . Effects of music on systolic blood pressure, diastolic blood pressure, and heart rate: a meta-analysis. Indian Heart J. 2012 ;64(3):309-13.クラシック名曲ガイド①~③ 音楽之友社 1994, 1995クラシックの名曲100選 宮本英世 音楽之友社 1994

音楽監修:酒井博美
国立音楽大学音楽学部楽理学科卒業,日本女子大学大学院人間社会研究科心理学専攻修了(修士・心理学),東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻内部障害学分野博士後期課程修了(博士・障害科学).東京福祉大学・短期大学部准教授