【音楽の自律神経への影響】
自律神経の活動は、音楽によって覚醒と鎮静の両方向に変化することが、非常に古くからのさまざまな研究でわかっています。基本的には、テンポが速くリズムや旋律が複雑な覚醒的音楽では、心拍や筋肉の緊張の増加がみられ、反対に、テンポが遅くリズムや旋律が単純な沈静的音楽では、心拍や筋肉の緊張の減少、皮膚温度の増加、皮膚電気伝導の増加がみられます。2012年にアメリカで行われた、11の研究のメタ解析でも、音楽療法を受けた群は受けなかった群と比較して、音楽療法の後で収縮期血圧と拡張期血圧の顕著な低下と、心拍数の顕著な減少がみられたことが示されています。
本日は音楽にも耳を傾けていただき、効果を感じていただければと思います。
【本日使用した音楽】

<くるみ割り人形 (作品番号71)>
チャイコフスキーによって1891~1892年に作曲されたバレエ音楽。今日では、クリスマスの時期の出し物として、世界各国でさまざまな演出・振付で上演されている。普段私たちが音楽として楽しむ演奏会用組曲は、新作発表の演奏会のためにバレエ初演に先立って披露されたもので、第一楽章「小序曲」第二楽章「特色ある舞曲」として行進曲、こんぺい糖の踊り、トレパック、アラビアの踊り、中国の踊り、あし笛の踊り、第三楽章「花のワルツ」から成っている。

<ラデツキー行進曲 (作品番号228)>
「ウィンナ・ワルツの父」と呼ばれるヨハン・シュトラウス1世によって1848年に作曲された、彼の曲の中でもっともポピュラーな作品。オーストリアの名将軍ラデツキー伯爵がウィーン革命の最中に当時オーストリア領であった北部イタリアの分離独立運動を鎮圧したことを祝って作られた曲。毎年元旦にウィーンから生中継される、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるニューイヤーコンサートで、必ずプログラムの最後に演奏される曲としても有名。

<ヴァイオリン協奏曲集 四季>
ヴィヴァルディによって1725年に出版された「和声と創意の試み」作品8という協奏曲集(全12曲)の第一番から第四番が「四季」である。 「四季」を構成する4曲には、それぞれ「春」「夏」「秋」「冬」の標題と、四季の自然とそこに生きる人間の営みを歌った作者不詳のソネット(十四行詩)が付けられている。

<交響曲第六番ヘ長調「田園」第五楽章(作品番号68)>
ベートーヴェンによって1807~1808年に作られた「田園」の最終楽章。「田園」は交響曲第五番「運命」とほぼ同時期に完成し一緒に初演された。「田園」という標題はベートーヴェン自身により付けられ、描写的な内容が盛られた曲として親しまれている。田園の風物を音で描いたものではなく、田園が人々に与える感情を、交響曲という形式で表している。
<引用・参考文献>
Loomba RS, Arora R, Shah PH, et,al. . Effects of music on systolic blood pressure, diastolic blood pressure, and heart rate:
a meta-analysis. Indian Heart J. 2012 ;64(3):309-13.クラシック名曲ガイド①~③ 音楽之友社 1994, 1995
クラシックの名曲100選 宮本英世 音楽之友社 1994

■酒井博美
国立音楽大学音楽学部楽理学科卒業,日本女子大学大学院人間社会研究科心理学専攻修了(修士・心理学),東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻内部障害学分野博士後期課程修了(博士・障害科学).専門学校,大学,大学院で心理学分野の非常勤講師.