「第1回臨床自律神経機能Forum」抄録

■伊藤 剛 北里大学東洋医学総合研究所

【目的】リアルタイム自律神経検査装置と電子瞳孔計における自律神経バランス評価の相関 性を冷え症患者において検証した。
【方法】検査に同意を得た冷え症4タイプ(混合型含む)90例のうち、今回は皮膚温や深部体温、生理検査データに不備の無い下半身型冷え症(女性)10例、内蔵型冷え症(女性)10例を対象とした。リアルタイム自律神経検査装置(きりつ名人Ⓡ)の自律神経バランス指標を示す安静時LF/HFと、同時期に測定した電子瞳孔計(イリスコーダⓇ)による自律神経バランスを示す散瞳時間と縮瞳時間のパラメータ比t5/t3との相関を検討した。なお、電子瞳孔計は右眼のデータを用い、解析にはピアソンの相関関係解析を用いた。
【結果】自律神経バランスの指標である安静時LF/HFとパラメータ比t5/t3は、下半身型冷え症では有意な正の相関(R=0.93、P=0.00010)を認め(図1)、内蔵型冷え症では有意な負の相関(R=-0.87、P=0.00096)を認めた(図2)。
【考察】下半身型冷え症の自律神経バランスは、実質的には逆の相関を示すことから、心臓性の交感神経が強い場合、中枢性の副交感神経が誘導されるような状況が推察される。一方、内蔵型冷え症では、実質的には正の相関を示すことから中枢性の自律神経バランスがそのまま心臓性の自律神経バランスに連動している可能性が示唆された。これはこれまでの研究により明らかにしてきた内蔵型冷え症の副交感神経優位性と関連する可能性がある。
【結論】心臓の自律神経バランスを示す安静時LF/HFは、電子瞳孔計における中枢性の自律神経バランスであるt5/t3と一定条件内において相関する場合があるが、常に相関するのではなく、自律神経の地域性や抑制反応により病態において異なるため、それぞれの自律神経バランス検査を評価する上では注意が必要である。

冷え性