お陰様で平成29年11月18日(土)第2回臨床自律神経機能Forumを盛会のうちに終えることができました。当日のスケジュールにあわせてご紹介いたします。
第2回臨床自律神経機能Forum 平成29年11月18日 川崎市産業振興財団 会議室
主催:臨床自律神経機能Forum
共催:川崎市医師会 川崎市内科医会 株式会社クロスウェル

第2回臨床自律神経機能Forum開催に寄せて

株式会社クロスウェルは2003年の創設で、自律神経機能検査機器に特化した会社です。先代の故 永谷基社長には、ご生前に数回、お会いいたしましたが、私が「計算負荷で心拍変動はどうなるんだろう?」とか「音楽の長調と短調で聞いた時の心拍変動はどう違うんだろう?」とか、単なる思い付きでお話したときに、眼を輝かせて話を聞いて下さったことが印象的でした。故 永谷社長は素晴らしい「研究マインド」の持ち主でした。「第1回臨床自律神経機能Forum」(2016年11月27日)は、まさに故永谷社長の遺志を継いで、立ち上げられたといっても過言ではないでしょう。
株式会社クロスウェルの藤井智恵子さんが立ち上げた「第1回臨床自律神経機能Forum」は私も参加いたしましたが、8題の講演と7題のポスターからなり、レベルの高いプログラムで、BGM音楽も流れるなか、多数の参加のもと盛会裏に終わりました。抄録集の付録の記事もイラストが豊富で、教育的で勉強になる内容でした。今回、「第2回臨床自律神経機能Forum」(2017年11月18日)が開催されるにあたり、第1回を凌駕する内容の企画が繰り広げられることを期待しております。
私は今年で61年目を迎える日本自律神経学会の前理事長で、国際自律神経学会2017(2017.8.30.~9.2.)の大会長でしたが、日本の「自律神経機能」の研究は、世界に誇るだけの歴史があります。   「自律神経機能」は人間の生命を支えています。人間を含めた生物は概日時計をもち、恒常性(ホメオスターシス)を保持し、体内器官の自動的制御を行っています。このような生命活動は、岩石やヒトが作った機械など無生物にはありません。地球史の流れの中で生命の進化とともに、「自律神経機能」の活動を統合的に制御するシステムが発達を遂げました。概日時計システム、次いで内分泌代謝・消化・排泄・呼吸・循環・発汗・免疫・情動の各システムが次々と自律神経系に組み込まれました。結果、全身の「自律神経機能」の活動が統合的に制御されるようになりました。「自律神経機能」のシステムは最も基本的で、かつ絶対に欠かせないものです。万が一その働きを失えば生命にかかわる調節系であり、生命神経系とも呼ばれます。
「自律神経機能」の研究分野はきわめて多くの領域にわたっています。「自律神経機能」は人間の全身に関わるみんなの学問対象です。基礎医学・臨床医学を問わず、東洋医学・西洋医学を問わず、診療科を問いません(神経内科、消化器内科、高血圧・循環器・腎臓内科、糖尿病・内分泌代謝内科、呼吸器内科、神経眼科、泌尿器科、免疫・アレルギー科、肛門科、産婦人科、脳神経外科、精神科)。また、職種や卒前・卒後も問いません(医師、研究職、大学院生、鍼灸師、看護師、理学療法士、卒前医学生など)。幅広い領域に学際的に関わるのが「自律神経機能」というキーワードです。
第2回目を迎える「臨床自律神経機能Forum」が、自由で楽しい研究発表と意見交換の場としての役割を演じると同時に、「自律神経機能」の様々な障害に悩まれる方々の診療とその治療法の開発に貢献することを期待しております。「第2回臨床自律神経機能Forum」の成功を心より祈念して、巻頭言とします。

2017年10月30日

黒岩 義之
横浜市立大学名誉教授 / 日本自律神経学会 前理事長

開催挨拶

出川寿一先生(川崎市内科医会会長・宮前平健栄クリニック・院長)

 

 

 

 

 

 

 

 

■第1セッション

座長:高田正信先生 (富山逓信病院・院長)

 

 

 

 

 

 

 

 

「心不全における反射性循環調節」  麻野井英次先生 

(大阪大学 国際医工情報センター 特任教授)

■麻野井英次 (大阪大学 国際医工情報センター 特任教授)

恒常性維持のために循環調節系は、動脈圧をモニタして自律神経系を介して血圧を一定に保つ負帰還システム(動脈圧反射)を有し、呼吸調節系は動脈血の二酸化炭素分圧(PaCO2)をモニタし、換気量を介してCO2を一定保つ負帰還システム(中枢性CO2化学反射)を形成している。末梢臓器への酸素運搬能が低下した心不全では、交感神経活動およびCO2化学感受性が増大しており、呼吸・循環系機能を亢進させる方向へ調節系がリセットされている。
1)動脈圧反射の減弱
交感神経活動の亢進に関わる動脈圧反射機能の臨床的解析はまだ不十分である。その理由は、1)血圧変動の速さによる圧反射ゲインの変化、2)圧反射の負帰還システムの影響、3)迷走神経圧反射と交感神経圧反射の分離など、を考慮した解析がなされていないためである。今回、動脈圧反射における迷走神経反射と交感神経反射機能を分離した臨床成績を示す。
2)心拍変動による迷走神経機能評価
吸気時には横隔膜神経活動と同期して迷走神経系が遮断される(ゲート効果)ため、心拍変動は迷走神経活動の基礎値だけでなく換気の大きさにも関連する。従って、心拍変動からみた迷走神経活動は、心拍変動の高周波成分の大きさだけでなく、換気量を入力-心拍変動を出力としたゲインで定量する必要がある。
3)化学反射と交感神経活動の相互関係
中枢性CO2化学反射と血漿ノルエピネフリン濃度には有意な正相関が認められる。両者の密接な関係は、動脈血二酸化炭素分圧が上昇したとき呼吸が増大するだけでなく、交感神経活動も同時に亢進することからも明かである。心不全におけるCO2化学反射の亢進機序には、中枢性交感神経遮断により化学反射が抑制されることから、交感神経活動により化学反射が亢進する悪循環の形成がある。
4)化学反射と圧反射の相互関係
 動脈圧反射と化学反射には相互抑制的な関係がある。事実、心不全患者においてO2化学受容器感受性と動脈圧反射機能には、有意な負の相関が認められる。これは、頸動脈体からの求心路は圧受容器からの求心路と同様に延髄孤束核に入るため、両者が拮抗的に干渉するためと考えられている。従って、心不全にみられる動脈圧反射の障害は延髄において直接的に、また交感神経活動を介して間接的に化学反射を亢進させている可能性がある。
5)肺伸展反射による交感神経制御
心不全における肺動脈圧の上昇や間質のうっ血は、肺に存在する機械的伸展受容器により感知され、迷走神経求心路を介して呼吸様式を修飾する。肺の機械受容器は4種類ありそれぞれ呼吸様式への作用が異なるため、これらが同時に作動すると呼吸は速く浅い不規則な呼吸になりやすい。このような浅く不安定な呼吸は肺伸展反射を介する交感神経の抑制効果を減弱させる。

*会場書籍紹介コーナー(クロスウェル蔵書 自律神経に関する書籍)でご紹介させていただきました。
麻野井先生も執筆しています。

 

座長:栗田正先生 (帝京大学ちば総合医療センター神経内科 教授)

 

 

 

 

 

 

 

 

「女性ホルモンと自律神経」  内田さえ先生

(東京都健康長寿医療センター研究所 自律神経機能研究室)

■内田さえ(東京都健康長寿医療センター研究所 自律神経機能研究室)

女性ホルモンは左右一対の親指くらいの大きさをした約6gの卵巣で作られています。女性ホルモンのうちエストロゲンが女性の第二次性徴の発現や卵胞の発育などの生理作用を持つことは良く知られていますが、それに加えて骨を強くしたり、血管壁をゆるめ、コレステロールを下げる働きをもち、心臓血管系の疾患を防いでいます。脳の認知機能を維持する作用も知られています(表)。エストロゲンの多様な作用は、老年期も含めて一生涯にわたって脳と身体の健康維持に働きます。
身体にストレスがかかるとエストロゲン分泌は低下します。卵巣からのエストロゲン分泌は、視床下部-下垂体系のホルモンにより制御されています。ストレスは視床下部に影響をおよぼすことにより、卵巣からのエストロゲン分泌を低下させると考えられています。一方、ストレスは交感神経活動を高めることも知られています。交感神経は心臓などの種々の内臓に分布するだけでなく、卵巣にも分布しています。私どもはストレスで交感神経活動が高まった際には、その影響が卵巣にも及ぶのではないかと考えました。しかし、卵巣に分布する交感神経がどのような働きをもつか分かっていませんでした。
そこで私どもは麻酔動物を用いて調べ、身体的ストレスが卵巣からのエストロゲン分泌を低下させることを見出しました。さらに、身体的ストレスによる卵巣支配交感神経活動の亢進が、エストロゲン分泌低下を引き起こすことを明らかにしました(図)。本発表では、卵巣のエストロゲン分泌の交感神経性調節に関する研究結果を紹介します。さらにエストロゲンの慢性投与が交感神経性のエストロゲン分泌調節に及ぼす影響についての研究結果も紹介します。

 

*会場書籍紹介コーナー(クロスウェル蔵書 自律神経に関する書籍)でご紹介させていただきました。
 内田先生も執筆しています。やさしい自律神経生理学はイラストが多くわかりやすいと好評です。

■ポスター紹介

ポスター掲示の先生方にも多くご出席いただきました。

今回は交流会の前に、ポスター掲示で当日ご出席の先生のご紹介と先生から一言メッセージをいただきました。

 

 

Bスポット療法が自律神経系に及ぼす効果について」伊藤宏文先生(いとう耳鼻科)

■伊藤宏文(医療法人社団徳照会 いとう耳鼻咽喉科)

【目的】
耳鼻咽喉科領域では上咽頭炎に対する治療法として、1%塩化亜鉛を上咽頭粘膜に塗布、擦過する上咽頭擦過療法(以下Bスポット療法)が行われている。自律神経系への作用機序に関しては、指尖脈波の解析や血中コルチゾールを測定しストレス評価を行った報告はあるが、リアルタイムで心拍変動数解析をおこない、自律神経活動を記録した報告はまだなされていない。今回、Bスポット療法が自律神経活動に及ぼす効果についてReflex名人を用いて解析を行ったので報告する。
【方法】
平成29年7月から10月までに慢性疲労の原因として上咽頭の病巣感染が疑われ、当院を紹介受診した17名の患者さん(平均年齢45.8歳)についてレントゲン検査、内視鏡検査などを行い慢性上咽頭炎と診断した。これらの患者さんに内視鏡下で経鼻法と経口法によるBスポット療法を行い、自律神経活動も同時に記録して心拍変動数解析をおこなった。
【結果】 鼻内の処置をおこない、内視鏡にて上咽頭の診察を開始すると、一時的に交感神経活動が亢進する。経鼻的にBスポット療法を行い、上咽頭天蓋付近に刺激を加え続けると、交感神経活動は沈静化し、副交感神経活動が亢進してくることが観察された。続いて経口的にBスポット療法を行うと絞扼反射がおこり再び交感神経活動の亢進が認められた。
【考察】
従来、慢性上咽頭炎の診断はBスポット療法を行ったときの激しい疼痛と出血によってなされてきた。近年は内視鏡による局所診断によって上咽頭粘膜への粘液付着や粘膜下鬱血、浮腫所見などから診断されることが多い。しかし日常診療でBスポット療法を行うと、擦過時の疼痛が強いことや経口からのアプローチでは絞扼反射が強く出てしまう事などから患者さんに敬遠されてしまう傾向があり、治療継続が困難となってしまうことが多い。Bスポット療法は視床下部―自律神経系に影響を及ぼす可能性や視床下部―脳下垂体―副腎系(ypothalamic-pituitary-adrenal axis , HPA axis)に影響を及ぼす可能性、大脳辺縁系の機能障害の改善に関与する可能性などが、諸家によって報告されている。現在、日本病巣疾患研究会ではBスポット療法の作用機序として①塩化亜鉛の組織収斂作用、抗炎症作用による上咽頭の炎症の鎮静化、②上咽頭擦過に伴う瀉血による上咽頭鬱血状態の改善を介した脳脊髄液・リンパ路・静脈循環の改善、③上咽頭に投射する迷走神経を刺激することによる自律神経系への作用と迷走神経・炎症反射を介した抗炎症作用、の3つの機序が考えられるとしている。
慢性上咽頭炎は交感神経系優位状態にあると考えられるが、患者さんにとっては苦痛を伴い、交感神経系を更に刺激するのではないかと考えられるBスポット療法が、どのような作用機序で治療効果を発現し、副交感神経系への刺激効果を発現しているのかを解明する目的で、今回の検討を行った。
今回の検討によってBスポット療法を経鼻法で行い、咽頭扁桃中央窩付近から上咽頭天蓋付近を1%塩化亜鉛溶液をしみこませた綿棒で擦過した場合には迷走神経刺激効果が認められることが確認された。経口法で上咽頭後壁付近を擦過すると絞扼反射がおこり、交感神経刺激効果が確認された。

フレイルと起立時血圧変動の関連 鳥羽梓弓先生(東京都健康長寿医療センター)

■鳥羽梓弓 石川譲治 原田和昌(東京都健康長寿医療センター)

【背景】
高齢者では、起立性低血圧や起立性高血圧の頻度が高くなり、また心血管イベントとの関連も報告されている. フレイルは要介護や寝たきりの前段階であるが、フレイルの高齢者に対する降圧療法は起立性低血圧の増加などが懸念されるため議論の余地があるところである.そこで、我々はフレイルと起立時の血圧変動の関連性について調べた.
【方法】
フレイル外来に通院中の連続186名に対して体位変換による血圧変動を調べた.(きりつ名人、クロスウェル社)フレイルは厚生労働省作成の基本チェックリストにて調査し、合計8点以上をフレイルと診断した.基本チェックリストのうち、運動器関係に関する点数を計算した.
結果:患者の平均年齢は77.6±6.8歳(男性40.5%)で75%の患者が高血圧であった.186名の患者のうち、28%がフレイルの診断を満たした.フレイルの患者では年齢が高く、血清アルブミン値が有意に低値であった.体位変換に伴う血圧変動は、非フレイル群に対してフレイル群では安静座位血圧が有意に低く(135.8±21.0 vs 128.6±20.2mmHg, p=0.033) 起立直後の血圧低下が有意に少なく(-6.1±11.6 vs 0.8±11.4mmHg, p=<0.001)起立1分後に有意な血圧上昇が認められた.(2.9±12.1 vs 8.2±11.5mmHg, p=0.008)起立直後、起立1分後の血圧変動は基本チェックリストの総合点数とは相関がなかったが、運動器関連の点数と相関していた.起立直後、起立1分後の血圧変動は 年齢、性別、Body Mass Index、飲酒、喫煙、高血圧、高脂血症、糖尿病、降圧剤の内服、安静時血圧で補正しても運動器関連の点数と関連していた.
【結論】
フレイル患者では、非フレイル患者と比較して、安静座位での血圧が低く、起立直後の収縮期血圧低下が少なく、起立後1分での収縮期血圧が大きく上昇した.起立時の血圧上昇には、特に運動器関連での機能低下が関与していた.

歯科治療時におけるアルコール依存症患者の自律神経解析ーとくに起立性高血圧症について

西村 康先生 神奈川歯科大学短期大学部 歯科衛生学科 特任教授

■井上 裕之1、5) 長谷 則子2) 井出 桃3) 角田晃3) 長谷 徹3) 宮城 敦4)  西村 康3) 柿木保明5)
1) 国立病院機構 久里浜医療センター 歯科  2) 神奈川歯科大学  歯学部  3) 神奈川歯科大学短期大学部 歯科衛生学科
4) 神奈川歯科大学  障害者歯科5) 九州歯科大学  老年障害者歯科学分野

【目的】
第1回臨床自律神経機能Forumにおいて、アルコ-ル関連障害群患者における起立性低血圧の発症メカニズムについて発表した。その調査検討過程で、さらに高率に起立性高血圧の発症を認めたので、今回はその発症メカニズムと、歯科臨床における注意点について報告する。

【方法および対象】
心拍変動解析装置(クロスウェル社製)により交感神経、副交感神経のバランス状態、自律神経活動およびバランス、循環状態を安静座位、起立に伴う動作時、起立1分後の各値を測定分析し、総合的な自律神経・循環の状態・反応を評価した。今回は起立性高血圧の判定としてSYS(最高血圧値)を用いた。対象は久里浜医療センタ-歯科を受診し、事前に治療時のモニタリングについて説明し、同意を得たもので、体動・不整脈の著しいものを除外した88例とした。

【結果および考察】
SYS値が起立後に11mmHg以上高い者を選別し、起立性高血圧と判定した。起立性高血圧と判定されたのは14例で全体の15.9%であった。これらの症例では全体的に副交感神経指標が低下している傾向と、刺激に対する過剰反応がみられ、これが本症発症の一因となったと推察される。

【結論】
アルコール関連障害者では歯科治療時に様々な症状が発現するため自律神経解析法は、歯科治療の安全性を高めるために不可欠であり、体調管理法の早期確立は極めて重要といえる。

「月経周期に関連した起立負荷時の自律神経活動の変動」

日吉和子先生(京都大学医学部附属病院産科婦人科)

■日吉和子 池田裕美枝 江川美保 万代昌紀( 京都大学医学部附属病院産科婦人科)

【背景と目的】
月経前症候群(PMS; Premenstrual Syndrome)は月経前に不快な精神的・身体的症状を繰り返す病態であり、そのうち精神症状が重篤で生活に著しい支障をきたす最重症型をPMDD (Premenstrual Dysphoric Disorder)という。卵巣のホルモン分泌機能が正常である女性において発生するこの病態のメカニズムには不明な点が多く、内分泌系と神経系の複雑な相互作用が示唆される。自律神経活動に関しては、PMDD女性において健康女性・PMS女性と比較し黄体期の高周波数帯域(HF: High Frequency)の有意な低下が示された横断的研究の報告がある。しかし月経周期に関連した黄体期、卵胞期の自律神経活動変動を長期的に測定した報告や起立負荷における自律神経の変化を検討した報告はまだ見当たらない。そこでわれわれはまず規則的な月経周期を有する健康女性において、起立負荷時の反射も含めた自律神経機能を縦断的に測定するpilot studyを行った。

【対象】
健康な若年成人30代女性、1名。喫煙習慣はなく、薬物及び経口避妊薬の使用もない。

【方法】
座位、起立、起立保持、座位をそれぞれ1分毎に連続して行い、その間の自律神経活動を心拍変動解析ソフト「きりつ名人®」(クロスウェル社)を用いて測定した。測定は1-3日に1回行い、月経5周期にわたり縦断的に測定した。月経前5日間(黄体期)、月経開始後5-10日目(卵胞期)のデータを用いて黄体期、卵胞期の自律神経活動についてt検定を用いて分析した。

【結果】
月経周期日数平均33.7±6.0日、月経平均日数4.8±1.7日間であった。PSST(The Premenstrual Symptoms Screening Tool)におけるPMDDスクリーニングではPMDD、PMSともに兆候は見られなかった。黄体期のデータ19日分、卵胞期のデータ23日分を対象に2群間のデータをt検定にて比較した。起立後立位保持時のHFは卵胞期と比較し、黄体期で有意な低下傾向がみられた(p=0.05)。安静座位、起立時、着席時のHFは卵胞期、黄体期で有意な差はなかった。

【考察と今後の展望】
本研究の結果より、PMS兆候のない健康女性でも月経周期に伴い起立負荷時において自律神経の変動が見られる可能性が示唆された。過去の報告では月経1周期において黄体期で1日間、卵胞期で1日間の自律神経活動の変化を集団で検討しており、健康女性においては黄体期、卵胞期での有意な変動は認められていない。しかし本研究の結果により、縦断的データ及び起立負荷時の指標を用いることで黄体期の自律神経活動変動を検出できる可能性が示唆された。月経随伴症状の心身相関のメカニズムを解明するために、PMS/PMDD女性および健康女性を対象に自覚症状モニタリングや心理検査も行いつつ、起立負荷への反応も含めた自律神経機能を長期的、縦断的に検討していきたい。

「日常生活の身体活動量が睡眠中の自律神経活動と睡眠の質に与える影響」
早野順一郎先生(名古屋市立大学医学・医療教育学分野 教授)

■吉田豊,湯田恵美,早野順一郎(名古屋市立大学大学院 医学研究科 医学医療教育分野)

【目的】
近年,健康管理のためのウェアラブルセンサが普及している.本研究では,腕時計型脈波計を用いた自身の睡眠管理を目的として,日中の身体活動量が睡眠中の自律神経活動と睡眠の質に与える影響を解析した.
【実験方法】
被験者は健常男性2名(subA:40歳,subB:23歳),起床後,活動量計 (Lifecorder GS,株スズケン)を腰に装着し,その日の就寝までの1日のエネルギー消費量(EE:energy expenditure) [kcal]を測定する.睡眠中は,3軸加速度センサ内蔵・腕時計型脈波計(APM,株スズケン)を用いて,脈波と体動の加速度を測定した.測定は21日間行った.subBは,2日だけ脈波の測定精度が保てなかったため,データ数は19日とした.
【解析方法】
脈波信号から脈拍間隔時系列を2Hzで算出した.就寝してから90分間おいて,心拍変動の平均NN間隔(MNN),高周波数成分のパワー(HFP,0.15-0.45 Hz)に対応する指標を算出した.また,睡眠の質は,終夜の3軸加速度から睡眠効率(SE : Sleep efficiency)算出して評価した.
【結果・考察】
subAは活動量の多い日と少ない日があるため,100[kcal]以上で相関係数を算出した(Fig1,Table1).
日常生活において身体活動量が多い日は,就寝後90分間のMNNとHFPが小さい.従って,心拍数が高く,迷走神経活動の抑制が示唆される.また,若年より中年の方が,EEと心拍変動指標の相関が強いため,加齢による体力低下に伴う生体負担度の増加は,睡眠中の自律神経活動に与える影響が強いと考えられる.若年は,活動量が多い日は睡眠の質が高まるが,中年では影響がなかった.
【まとめ】
睡眠管理をするためには,SEだけでは評価し難く,心拍変動指標も取り入れて評価しなければならない事が示唆される.今後,サンプル数を増やし検討して行きたい.

「心電図R-R間隔の鍼刺激に対するインパルス応答: 経穴による差異」
山本健人様(名古屋市立大学医学・医療教育学分野)

■山本健人,山田篤,野田沙希,湯田恵美,吉田豊(名古屋市立大学大学院 医学研究科 医学医療教育分野)

【背景と目的】
生体への鍼刺激による影響について心拍変動解析を用いた研究はよく行われており,その多くで心拍数の減少が報告されている.しかし,鍼刺激直後における心拍応答を解析したものは少ない.本研究では,経穴(CV16,CV17)への一回鍼刺激に対する心拍のインパルス応答の差異について解析した.
【実験方法】
健常成人男性5名(31±16歳)に対し,CV16とCV17への一回鍼刺激を1時間あけて行った.鍼刺激の順序は,被験者間でランダマイズした.仰臥位にて鍼刺激前5分,鍼刺激後7分間のRR間隔を,きりつ名人(株クロスウェル製)を用いて記録した.
【解析方法】
RR間隔時系列をスプライン関数で補間し,10Hzでリサンプリングした.CV16とCV17それぞれ,鍼刺激前後60秒間のRR間隔時系列をSignal averagingした.CV16の1名の測定精度が保てなかったため,CV16は4例とした.
【結果・考察】
CV16,CV17ともに鍼刺激直後はRR間隔が増加する.CV16は介入後,RR間隔が持続するが,CV17は20秒程持続し,その後,減少していく傾向が観察された.
一回鍼刺激に対して,経穴によって心拍の応答時間が異なり,神経回路の推定が期待される.

「自律神経機能による建設作業員の熱ストレス評価の試み」
山崎慶太先生(株式会社竹中工務店)

■山崎慶太1), 小林宏一郎2), 下澤達雄3)
1)竹中工務店, 2)岩手大学, 3)国際医療福祉大学

【目的】
従来からの皮膚温度・深部体温(鼓膜温度)に加えて、建設作業員の作業中の心拍を測定し、そのR-R間隔  (心拍変動)の周波数解析結果から心拍(HR)、自律神経活動(CVRR)、交感神経指標(LF/HF)、副交感神経指標(ccvHF)を求め、ファン付き作業服(Air Conditioning Wear :ACW)の効果や熱中症の兆候など、自律神経機能により熱ストレスを抽出できるか評価を試みた。
【方法】
環境温度を、実際の屋内工事、屋外工事、それぞれの平均気温29℃、34℃に統制し、活動量は、鉄筋工、型枠大工、それぞれに現場と類似した模擬作業をさせて統制し、被験者にウェアラブル心拍センサVHS-1(ユニオンツール社製)をベルト電極を使用して胸骨下部に装着して心電波形を測定した。被験者は、鉄筋工6名、型枠大工6名の計12名、二人一組で2日間(29℃、34℃)実験を行い、一人はACW着用、もう一人はTシャツのみで、午後はACWの有無を交代し実験を行った。計測した心電波形をについて、MEM法(最大エントロピー法)による周波数解析と時間領域解析を行い、HR、CVRR、LF/HF、ccvHFをそれぞれ算出した(HRV名人(クロスウェル社製)を使用)。
【結果】
環境温度34℃で、鉄筋工の自律神経活動と活動量の一日の経時変動の例では、ccvHFが休憩時間中に高く、午前作業終了時(ACWあり)に比べて午後作業終了時(ACWなし)のHRは高く、CVRR、ccvHFは低くなる傾向が認められた。環境温度34℃のCVRRの二元配置分析結果(有効な分析対象者数94名)でも、ACWなしの場合、午後(平均値4.43%)は午前(平均値5.91%)より有意に低く、かつ午後の時間帯では、ACWなし(平均値4.43%)はACWあり(平均値5.85%)より有意に低く、自律神経活動の低下から疲労の蓄積が示唆される午後の時間帯は、 特にACWの効果が顕著な可能性が考えられた。

「カラオケ歌唱が自律神経活動と感情に及ぼす影響の検討」
酒井博美先生(東北大学大学院医学系研究科内部障害分野 )

■酒井博美(東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野)

【背景】
歌唱はこれまでにもさまざまな生理学的変化に関連することが示されている。例えば、歌唱トレーニングにより、呼吸筋が鍛錬され呼吸の状態が良好になる他、神経伝達物質の変化をもたらし、免疫機能を向上させる効果も明らかとなっている(Kang J et,al., 2017)。また、最近、歌唱を娯楽として行う「カラオケ」が、長寿の人々が健康や老化防止のために行っている活動の上位にランキングしていることもマスコミで話題になった。
カラオケは、安価で手軽に楽しむことができる活動であり、日常的に取り入れることで心身に有効性があるのであれば、ストレス対策や介護予防の手段として望ましい。しかしながら、その有効性について、ストレスや身体および認知機能とも密接に関連する自律神経活動、加えて感情の両側面から検討した報告は知る限りない。そこで本研究では、カラオケが心身の活性化に有効か否かについて、自律神経活動測定と感情評価により検討した。
【方法】
44歳から64歳の健常成人男女8名(平均年齢52.9±6.24歳、男性2名)を対象に、カラオケルームにて各自好みの曲(1曲3~5分)を2曲、ローテーションをしながら歌唱し、カラオケ歌唱前・中・後における自律神経活動について「きりつ名人」および「リフレックス名人」(いずれも株式会社クロスウェル製)を用いて測定した。加えて歌唱前後の感情状態について、Profile of Mood States 2(POMS2)日本語版成人用短縮版を用いて調査した。
【結果】
自律神経活動
カラオケ歌唱時と非歌唱時で自律神経活動を比較した結果、歌唱時において非歌唱時に比べ、心拍(p<0.01)、副交感神経活動の指標とされるccvHF(p<0.01)、心拍R-R間隔のゆらぎから自律神経活動全体の大きさを示すCVRR(p<0.01)に有意な増加が認められた。また、一連のカラオケ歌唱前後における自律神経活動においても、歌唱後において歌唱前に比べ、自律神経反射(起立-安静座位CVRR)が有意に増加し(p<0.01)、心拍には減少傾向が認められた(p=0.08)。
感情
一連のカラオケ歌唱前後でPOMS2の測定値を比較した結果、7項目中「怒り‐敵意」(p=0.04)、「混乱‐困惑」(p=0.03)、「緊張‐不安」(p=0.05)、および苦痛や情動障害といった否定的気分の程度を示す「総合的気分状態」(p<0.01)が歌唱後に有意に低下し、「活気‐活力」(p<0.01)が有意に上昇した。
【考察と展望】
本研究の結果より、カラオケで歌唱することが、自律神経活動の活性化および肯定的感情の増加と否定的感情の減少に繋がることが明らかとなった。これらの結果は、歌唱による心肺機能活動の増加や気分の発散に起因するものと考えられる。今後は、対象者を増やし結果の普遍性を検討し、カラオケの健康増進や介護予防への活用の可能性を探索することが望まれる。

引用文献>Kang J, Scholp A, Jiang JJ.  A Review of the Physiological Effects and Mechanisms of Singing. J Voice. 2017. doi: 10.1016/j.jvoice.2017.07.008.

「地域における自律神経機能評価の実践」
(特定非営利活動法人日本臨床研究支援ユニット)

相場繁様                       石井苗子様

 

 

 

 

 

 

 

 

相場繁様(特定非営利活動法人日本臨床研究支援ユニット きぼうときずな)

石井苗子様(特定非営利活動法人日本臨床研究支援ユニット理事 参議院議員)

■相場繁(特定非営利活動法人日本臨床研究支援ユニット)

【背景】
2011年3月に発生した東日本大震災及び東京電力原子力発電所事故に対し、弊法人は医療支援プロジェクト「きぼうときずな」として、福島県自治体に保健師及び看護師の派遣を行なっている。
2015年4月より、復興庁補助事業「心の復興」事業の一環として、健康増進に関する正しい知識の提供を目的に、福島県内のスーパー店舗における簡易健康チェックブースの設置を行っている。
【目的】
地域住民に対する健康増進知識の提供の方法として、自律神経機能評価を実践した。
【方法】
2017年9月24日、福島県福島市内のヨークベニマル平野店における簡易健康チェックブースにおいて、「きりつ名人ヘルスケア」により、心の元気度(安静時CVRR)、緊張度(安静時LF/HF)、ストレス回復力(安静時ccvHF)、ストレス反応力(起立時ΔCVRR)、ストレス検出力(起立時ΔLF/HF)を測定し自律神経機能評価を実施した。
測定結果に対し、独自に作成したパンフレット「自律神経って何?」を利用し、保健師による結果説明及び希望者に対する生活における助言を行った。
測定対象者に対して、NPSスコア(家族や友人に勧める可能性)、健康意識啓発度(健康を保つために何をするべきか分かったか)に関するアンケートを行なった。
【結果】
簡易健康チェックブースを設置した4時間(11時から15時)で、全45名の測定を行なった。
測定対象者の年齢は平均65.8歳(最大82歳、最少20歳)であった。
データ安定度について、安静時 97.6 ± 5.1 %、起立時 94.9 ± 6.6 %、立位時 97.5 ± 6.1 %、であった。安静時、起立時、立位時のいずれかで90%未満を示した者は8名であった。
NPSスコア、健康意識啓発度について、同会場での測定対象者(N=37)は、自律神経機能評価を実施していない別会場での測定対象者(N=41)と比べたところ、NPSスコア(4.2 ± 1.2 v.s. 3.9 ± 1.1)、健康意識啓発度(4.3 ± 0.9 v.s. 4.4 ± 0.7)であった。
【考察】
地域住民への心身の影響を評価する方法として、きりつ名人ヘルスケアによる自律神経機能測定は、データ安定度が高く評価に支障がないことが示された。
NPSスコア、健康意識啓発度について明確な差は認められなかったものの、自律神経機能の評価を通じて住民とのコミュニケーションを深めることが出来たと考えている。今後も、健康増進知識の提供を目的に、地域において実践を重ねていく。

*会場書籍紹介コーナー(クロスウェル蔵書自律神経に関する書籍)でご紹介させていただきました。
東日本震災被災住民支援プロジェクトの実録です。

 

 

「きりつ名人のヘルスツーリズムへの応用の試み」藤田小矢香先生
(島根県立大学出雲キャンパス)

■藤田小矢香 山下一也(島根県立大学出雲キャンパス)

【目的】日頃ストレスを感じている成人就業者に癒しのヘルスツーリズムを企画した。1泊2日で出雲大社参拝、ヨガ、温泉浴、薬膳料理、瞑想等を参加者に体験してもらい、自律神経系に及ぼす影響について科学的検証を行った。

【方法】対象者は男性 4 名(20~60 歳代)、女性 1 名(40 歳代)である。1 泊 2 日で癒しのヘルスツーリズムに参加してもらった。ヘルスツーリズムの行程は表に示す。ヘルスツーリズム前後で自律神経機能検査(自律神経系の緊張度)、肩こりの重症度、血圧測定(デジタル自動血圧計)、唾液採取、気分プロフィール検査(Profile of Mood States 2:POMS2)を行った。自律神経機能検査は、「きりつ名人」 (株式会社クロスウェル:きりつ名人無線対応版 Bluetooth 方式による解析ソフト)を用いた。倫理的配慮として島根県立大学出雲キャンパス倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号:212)。

【結果】POMS2における気分の変化を図に示す。尺度得点において AH(怒り-敵意)、CB(混乱-抑うつ)、DD(抑うつ-落ち込み)、FI(疲労-無気力)、TA(緊張-不安)得点はヘルスツーリズム前よりヘルスツーリズム後において有意に得点が低かった(p<.01~.05)。反対に VA(活気-活力)、F(有効)はヘルスツーリズム前よりヘルスツーリズム後において
有意に得点が高かった(p<.01~.05)。ヨガにおける自律神経機能検査では、ヨガにより副交感神経活動が優位になることが示された。

「コミュニケーション評価における自律神経活性度の活用可能性検討」
三井実様(富士ゼロックス株式会社)

■三井実,河野克典,小村晃雅,尾崎夏穂,飯田靖,堀田竜士
富士ゼロックス株式会社 研究技術開発本部 コミュニケーション技術研究所

【目的】 自律神経の評価は,個人の健康を支援する目的で実施されることが多かった.一方,自律神経は外界からの多様な刺激に対して反応を示す特徴があるため,自律神経を指標とした評価は,個人の健康のみに捉われない幅広い用途に活用できる可能性がある.
本稿では「コミュニケーションの評価指標として自律神経を活用できる」という仮説を試験的に検証した.

【方法】 ある企業で実施された対話ワークショップにおいて,参加者 8 名に自律神経測定センサー(ユニオンツール社 My Beat)を装着させ,対話ワークショップ中の参加者の自律神経活性度の時系列データを取得した.ワークショップ後,参加者 1 名(参加者 A とする)に,対話ワークショップ時に撮影した映像を視聴させ,対話ワークショップ中の自己の状態を主観評価してもらった.これら 2 つのデータを参照し,対話ワークショップ中の自律神経活性度の変化と,参加者の主観評価との間に何らかの関係があるかどうかを検証した.

【結果】 参加者 A 個人の自律神経活性度と主観評価の結果を図 1 に示す.参加者 A が①傾聴・共感している,②他者との関係を意識しながら話をしている,と評価しているタイミングにおいて,自律神経活性度が高まる傾向があることが分かった.

【考察】 対話ワークショップ中の自律神経活性度と参加者の主観評価との間に,何らかの関係があることが示唆された.今後は,自律神経に関わる様々な特性値とコミュニケーションの関係を明らかにしていく.

myBeatは,ユニオンツール株式会社の登録商標です

「1拍1拍にこだわる心拍変動解析」阿部敦(株式会社クロスウェル)

■阿部 敦(株式会社クロスウェル)

クロスウェルが開発採用しているソフト「meijin」の「心拍連動連続解析方式」について述べる。

1.周波数解析手法 FFT(高速フーリエ変換)とMEM(最大エントロピー法)
心拍変動解析はR-R間隔(以下RRI)時系列データを周波数解析して行われる。RRIの周波数解析は,サンプリング間隔が一定となるようにRRI時系列データを補間して波形を求め,この波形を周波数解析してパワースペクトルを求める,という手順で行われる。
LFを0.04Hz~0.15Hzとしたとき,最も長い0.04Hzの周期を含む波形を構成するには1 / 0.04 = 25秒が必要となる。クロスウェル社製心拍変動解析ソフトは,LFを最短かつ十分に表現するため,30秒の時系列データを採用している。
周波数解析においては,FFTやMEMがしばしば用いられる。
FFTとMEMの是非・優劣は別に譲るとして,FFTは投入した波形が永続的に続くことが前提であるため,波形を窓関数にかけて,両端の振幅がゼロになるよう変形して解析する。対してMEMは波形をそのまま解析するという違いがある。

2.自律神経反射評価と窓関数
自律神経反射評価においては,窓関数によって鋭敏性を欠いてしまうことが問題となる。
窓関数によって,波形は両端の振幅はゼロとなる。振幅がゼロであればパワーはゼロであるから,波形両端のパワーは小さく評価される。
このような窓関数の影響は,区間をオーバーラップさせ平均をとることで軽減できるとされるが,パワーの変化が周波数解析に現れるまでにタイムラグを生む。タイムラグは反射評価,とりわけリアルタイム解析においては弱点となる。
他方,MEMは波形をそのまま周波数解析することができるので,この弱点はない。

3.自律神経反射評価における心拍連動連続解析方式の優位性
クロスウェルが開発採用した心拍連動連続解析方式は,30秒のデータ長で,心拍の検知に同期し,周波数解析を窓関数が不要なMEMで解析し,同時に時間領域解析を行うことにより,一心拍ごとの心拍変動解析の動的な評価を可能にした。
さらに,近年のパーソナルコンピューターの演算能力の向上と心拍連動連続解析方法により,リアルタイムに自律神経反射を評価することが可能になった。

「エンコサペンタエン酸/アラキドン酸(EPA/AA)と自律神経機能の関連」

田中寛人先生(和歌山県立医科大学付属病院)

■田中寛人,有田幹雄(和歌山県立医科大学附属病院 紀北分院内科)

【目的】
動脈硬化性疾患のマーカーとしてアラキドン酸(AA)とエイコサペンタエン酸(EPA)の比であるEPA/AAが報告されている。一方で自律神経系の異常は、高血圧の成因に関与していることが示されている。今回、血中EPA/AA、ドコサペンタエン酸(DHA)と自律神経機能との関連を調査した。

【対象と方法】
和歌山県下での動脈硬化健診に参加した住民343名(平均年齢61.1±9.1歳、男性141名、女性202名)を対象とした。動脈硬化健診を行ったうえで、ガスクロマトグラフィー法でAA、EPA、ドコサヘキサエン酸(DHA)を測定した。自律神経機能は、起立負荷検査で、座位(1分)→立位(2分)→座位(2分)の簡便法で行い、検査中は左上腕部より血圧を1分間隔で測定するとともに、心電図R-R間隔を記録して評価した。

【結果】
EPA/AAは、安静時CVRR、安静時CCVHF、安静時CCVLFと有意な負の相関を認めた。またDHAも同様に安静時CVRR、安静時CCVHF、安静時CCVLFと有意な負の相関を認めた。しかしながら、EPA/AAとDHAは、年齢とも負の相関を認めた。年齢による影響が示唆された。そこで、年代ごとに検討したところ70歳代においてEPA/AAは、⊿LH/HFと安静時平均心拍と有意な負の相関を認めた。DHAは、安静時LF/HFと正の相関の傾向(p=0.0522)、⊿LF/HFと負の相関の傾向(p=0.0703)を認めた。

【結語】
EPA/AA、DHAは、自律神経機能への関与が示された。とくに70歳以上の高齢者において血中EPA/AAが高値であれば、交感神経の変動の指標である⊿LF/HFが抑えられ平均脈拍も抑えており、循環動態を安定化していた。

「心拍変動解析で無酸素性作業閾値レベルを推測できるか」
阿部将之先生(東北大学大学院医学系研究科内部障害分野)

■阿部将之1), 小川佳子2), 三浦平寛1), 田澤泰3),森信芳3)伊藤 修4), 上月正博1)
1) 東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野 2) 帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科
3)岩手県立胆沢病院呼吸器内科4)東北医科薬科大学医学部リハビリテーション学

【はじめに】
慢性疾患運動療法では、無酸素性作業閾値(Anaerobic Threshold; AT)の強度での運動が推奨されている。ATレベルの設定には、換気性作業閾値(Ventilatory Threshold; VT)を用いるのが一般的であるが、VTを求めるためには呼気ガス分析を行わなければならない。近年、より簡便にATを求める方法として、漸増負荷運動中の心拍変動(Heart Rate Variability; HRV)が利用できるのではないかといわれている。そこで、本研究では漸増運動負荷中のHRVの周波数解析からATレベルが推測できるかどうかを検証した。
【対象】
健常な若年成人男性25名(平均年齢27.6 ± 3.5歳)
【方法】
自転車エルゴメータを用い、20W/分の直線的漸増運動負荷症候限界まで施行し、HRV解析(「Reflex名人@」(クロスウェル社)を使用)と呼気ガス分析を運動負荷試験中に同時に行った。
【結果】
副交感神経活動の指標である高周波成分(High Frequency Power; HF)は、全ての被験者において運動負荷開始とともに徐々に低下し、その後運動強度が増加しても低下せずに一定となった。この運動負荷量が増加してもHFが変化しなくなるポイントをHFの閾値(HRVT-HF)とし、HRVT-HF時と呼気ガス分析より求めたVT時のV(・)O2と心拍数を比較したところ、両者には正の相関が見られたが、前者の方が後者よりも高かった。
【まとめと今後の展望】
本研究の結果より、HRVの周波数解析、とくにHFの変化からATレベルを推測できることが明らかになった。ただし、HRVT-HF時の運動強度や心拍数をATレベルの指標としてそのまま用いると過大評価になってしまうので、回帰式を用いた補正が必要である。
HRVの周波数解析装置は、呼気ガス装置に比べ安価で大きなスペースを必要としないため、呼気ガス分析装置を有していない施設においても導入しやすいと考えられる。今後、女性、高齢者、有疾患者において、あるいはトレッドミルを用いた多段階運動負荷方式でのプロトコルにおいても本研究と同様の結果が得られれば、ATレベル設定におけるHRVの有用性を確立でき、HRV周波数解析装置の汎用化につながると思われる。

*****交流会会場*****

自律神経機能を みる ×しる ×心豊かにくらすをテーマに各分野の先生方にご協力いただき研究内容を掲示し、ご交流いただきました。

ポスター掲示のみならず当日多くの皆様にご参加いただき、活発な意見交換で会場が大いに盛り上がりました。

「普段お話する機会のない研究者の方々と直接お話することができ大変勉強になりました」

「セッションとポスターの2形式で行われ、セッションでは専門的な内容をじっくりと、ポスターセッションでは自由で和やかな雰囲気で交流でき、楽しかったです。」

「交流会の時間がもっとほしかった」などのお声をいただいています。

■ポスター掲示

 ●ポスター 各分野の先生の心拍変動解析の臨床・研究でのご活用をポスター掲示にてご紹介(敬称略)
・「Bスポット療法が自律神経系に及ぼす効果について」伊藤宏文(いとう耳鼻科)
・「フレイルと起立時血圧変動の関連」鳥羽梓弓(東京都健康長寿医療センター)
・「歯科治療時におけるアルコール依存症患者の自律神経解析」井上 裕之(国立病院機構 久里浜医療センター歯科 )
・「月経周期に関連した起立負荷時の自律神経活動の変動」日吉和子(京都大学医学部附属病院産科婦人科)
・「エンコサペンタエン酸/アラキドン酸(EPA/AA)と自律神経機能の関連」田中寛人(和歌山県立医科大学付属病院)
・「心拍変動解析で無酸素性作業閾値レベルを推測できるか」阿部将之(東北大学大学院医学系研究科内部障害分野)
・「日常生活の身体活動量が睡眠中の自律神経活動と睡眠の質に与える影響」吉田豊(名古屋市立大学医学・医療教育学分野)
・「心電図R-R間隔の鍼刺激に対するインパルス応答: 経穴による差異」山本健人(名古屋市立大学医学・医療教育学分野)
・「自律神経機能による建設作業員の熱ストレス評価の試み」 山崎慶太(株式会社竹中工務店)
・「カラオケ歌唱が自律神経活動と感情に及ぼす影響の検討」酒井博美(東北大学大学院医学系研究科内部障害分野 )
・「地域における自律神経機能評価の実践」相場繁(特定非営利活動法人日本臨床研究支援ユニット)
・「きりつ名人のヘルスツーリズムへの応用の試み」藤田小矢香(島根県立大学出雲キャンパス)
・「コミュニケーション評価における自律神経活性度の活用可能性検討」三井実(富士ゼロックス株式会社)
・「1拍1拍にこだわる心拍変動解析」阿部敦(株式会社クロスウェル)

■きりつ名人ヘルスケア体験コーナー

一人で気軽にストレスチェック可能なきりつ名人ヘルスケアを体験いただきました。

 

 

 

■meijin展示・体験コーナー

現在開発中の複数台数の測定コントロールソフトをはじめ、新しく開発した研究用無線対応ソフト、腕時計型脈拍計対応ソフトなど展示し、meijin開発技術者よりご紹介しました。

ドリンクコーナー

交流会を活性化したいという思いをこめて、飲み物と自律神経が活性化するといわれているカレーパンなどをご用意しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■書籍の紹介コーナー

meijin倶楽部ご賛同の先生方の自律神経に関する書籍をご紹介しました。
ご購入はアマゾン等で可能です。

 

 

 

 

■企業展示・発表 (敬称略)
株式会社エー・アンド・デイ
株式会社クロスウェル
富士ゼロックス株式会社
ユニオンツール株式会社

協賛企業の皆様の企業展示・発表で会場は盛り上がりました。

■BGM
音楽によって自律神経は変化します。今回BGMにもこだわってみました。

【音楽の自律神経への影響】
自律神経の活動は、音楽によって覚醒と鎮静の両方向に変化することが、非常に古くからのさまざまな研究でわかっています。基本的には、テンポが速くリズムや旋律が複雑な覚醒的音楽では、心拍や筋肉の緊張の増加がみられ、反対に、テンポが遅くリズムや旋律が単純な沈静的音楽では、心拍や筋肉の緊張の減少、皮膚温度の増加、皮膚電気伝導の増加がみられます。2012年にアメリカで行われた、11の研究のメタ解析でも、音楽療法を受けた群は受けなかった群と比較して、音楽療法の後で収縮期血圧と拡張期血圧の顕著な低下と、心拍数の顕著な減少がみられたことが示されています。

【使用した音楽】

<ヴァイオリン協奏曲集 四季>

ヴィヴァルディによって1725年に出版された「和声と創意の試み」作品8という協奏曲集(全12曲)の第一番から第四番が「四季」である。
「四季」を構成する4曲には、それぞれ「春」「夏」「秋」「冬」の標題と、四季の自然とそこに生きる人間の営みを歌った作者不詳のソネット(十四行詩)が付けられている。ヴィヴァルディは、その叙事詩に歌われたさまざまな情景や具体的なエピソードを、ソロ協奏曲の整然たる構成の中で、リアリスティックに描写している。四季の移り変わりを標題音楽のテーマとすること自体は決してヴィヴァルディの専売特許ではないが、協奏曲の枠の中で成し遂げたという点で画期的な作品ということができる。
「四季」の特徴を簡単に記すと、「春」は、第一楽章で新しい春の訪れを迎える喜びが表現され、第二楽章では草原に横たわってまどろむ羊飼いが描かれる。第三楽章では、輝く春の素晴らしい空のもとで、乙女たちも羊飼いもひなびた牧笛の陽気な調べに合わせて踊る。「夏」は、「春」が明るいホ長調で書かれているのに対して、暑さの厳しいいやな季節としてト短調で描かれる。第一楽章は強い日差しに人も家畜もあえぐさまや、はげしい嵐を恐れ不安におののく村人の嘆きが表現されている。第二楽章では、疲れた羊飼いに蝿や虻の群れが襲いかかる場面が描かれている。第三楽章は「夏のきびしい季節」の副題をもち、吹きすさむ嵐、とどろく雷鳴がドラマティックに描写される。「秋」は、豊作の喜びにわく農民たちの祭りの雰囲気や狩りの情景が明るいト短調でいきいきと描かれる。第一楽章の「村人たちの踊りと歌」では村人たちが豊作の祝い酒に酔って、眠り込むまでが描写されている。第二楽章は「眠る酔っ払いたち」の副題をもつ。人々が眠る静かな秋の夜の情景である。第三楽章では、角笛や鉄砲の音、猟犬の吠える声など勇壮な狩りの情景が活写されている。「冬」は、第一楽章で一面雪と氷に覆われた冬の凍てつく寒さ、寒さに歯がカチカチと鳴る様子などが表現される。第二楽章では戸外に降る雨、暖かい暖炉に憩う幸福が歌いあげられており、「四季」の中でもっとも美しい叙情的な楽章といわれる。第三楽章では、氷の上を小走りに行く人が滑って転倒するさまや、春の訪れを先触れする南風と北風の争いが描かれている。

<引用・参考文献>
Loomba RS, Arora R, Shah PH, et,al. . Effects of music on systolic blood pressure, diastolic blood pressure, and heart rate: a meta-analysis. Indian Heart J. 2012 ;64(3):309-13.クラシック名曲ガイド①~③ 音楽之友社 1994, 1995クラシックの名曲100選 宮本英世 音楽之友社 1994

音楽監修:酒井博美
国立音楽大学音楽学部楽理学科卒業,日本女子大学大学院人間社会研究科心理学専攻修了(修士・心理学),東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻内部障害学分野博士後期課程修了(博士・障害科学).専門学校,大学,大学院で心理学分野の非常勤講師.

■第2セッション

座長 黒岩義之先生(横浜市立大学・名誉教授/日本自律神経学会 前理事長) 

 

 

 

 

 

 

「心拍変動解析の新たな可能性」  早野順一郎先生(名古屋市立大学医学研究科 教授)

■早野順一郎 (名古屋市立大学医学研究科)

1970年代に始まった現在の心拍変動研究は、自律神経機能評価法の開発および疾患の予後予測という2つの流れの中で進んできた。前者では検査室等における短時間心拍変動のスペクトル解析から、心臓迷走神経機能指標としての高周波数(HF,0.15-0.45 Hz)成分や心拍数圧受容器反射性調節機能指標としての低周波数(LF,0.04-0.15 Hz)成分などが発見され、後者ではホルター心電図から得られる自由行動下24時間心拍変動の時間領域、周波数領域、非線形解析によって、急性心筋梗塞後や慢性透析下末期腎不全などの生命予後指標である超低周波数成分(VLF)、detrended fluctuation analysis (DFA)によるα1、deceleration capacity(DC)などが発見された。この2つの研究の流れは現在も続いているものの飽和状態に近づいていることも否めない。これに対し、近年、心拍変動を心拍ゆらぎのパターンとして見直す研究が第3のアプローチとして始まっている。その嚆矢と言えるのは、心室性期外収縮に対するR-R間隔反応から圧受容体反射感受性を評価することで急性心筋梗塞後の予後を予測するheart rate turbulence (HRT)である。また、演者らは心拍ゆらぎから得られる生体指標としてcyclic variation of heart rate (CVHR)による睡眠時無呼吸の検出、CVHRの振幅(Acv)による急性心筋梗塞や心不全の予後予測、HFパワー集中度(Hsi)による入眠時点及びノンレム睡眠の検出、R-R間隔のDip & Waveによる運転中の眠気の検出などの研究を進めている。心拍変動解析の新たな可能性として、第3のアプローチにおける研究成果を紹介したい。

*会場書籍コーナー(クロスウェル蔵書 自律神経に関する書籍)でご紹介させていただきました。
早野先生も執筆しています。

 

「HPV vaccination associated neuro-immunopathic syndrome(HANS)の自律神経機能障害:きりつ名人所見から学ぶ」 平井利明先生(帝京大学医学部溝口神経内科 准教授)

平井利明1),黒岩義之2),西岡久寿樹3)4)

1)帝京大学医学部溝口病院神経内科,2)帝京大学医学部溝口病院脳卒中センター,
3)政策大学院大学,4)一般財団法人難病治療研究振興財団

【背景】
我々は子宮頚癌ワクチン後の副反応に対してHANS(HPV vaccine-associated neuro-immunopathic syndrome)という疾患概念を提唱し,脳血流異常,脳波異常,内分泌異常と報告し,その責任病巣は視床下部・視床・辺縁系とした.
【目的】
子宮頚癌ワクチン後接種後の患者における脳波所見の共通した特徴を捉えること,発作性異常運動を認めるHANSの自律神経異常を生理学的に捉える.
【対象・方法】
脳波検査は,HANSと診断された25症例(14歳から22歳の女性)で行われた.「きりつ名人」は,発作性異常運動を認めるHANSの4症例(16歳から22歳の女性).「きりつ名人」で自律神経活動,交感神経機能(反射・活動),副交感神経機能,カテコラミン・コリン作用成分を評価した.4例とも起立位をとれず下肢挙上で測定した.診断には西岡らのHANS診断予備基準2014を用いた.子宮頚癌ワクチン接種前にてんかん,統合失調症,うつ病,線維筋痛症,膠原病患者は除外した.ベンゾジアゼピン系薬剤の内服者も除外した.
【結果】
脳波では「14/25例でwaxing&waningの欠如,9/25例でslow α波(9Hz未満),8/25例でdiffuse α波」で, 「2/25例で陰性棘波,7/25例でsmall positive spikes」で,「20/25例でα波異常が主たる所見」であった.「きりつ名人」では,自律神経活動は3例が活動低下(1例は反射亢進),交感神経活動は3例が活動低下(1例は反射亢進,1例は反射低下),副交感神経機能は3例で活動低下,カテコラミン作用成分は3例が活動低下(1例は反射亢進),コリン作用成分は3例で活動低下(2例は反射亢進)であった.「きりつ名人」を発作前後で施行しえた症例では,発作時に交感神経指標(LH/HF)の高値と,副交感神経指標(HF)の低値を認めた.
【考察】
脳波検査の結果は過去の我々の報告のうち視床障害を支持する可能性がある.「きりつ名人」については症例数を増やすと共に治療的改善の客観的な指標になるか検討を重ねたい.

「心拍変動解析による臨床研究のすすめ~自律神経を介する臓器連関、評価の試み~」栗山長門先生(京都府立医科大学大学院医学研究科 准教授)

■栗山長門(京都府立医科大学医学部 地域保健医療疫学・神経内科)

我々は、これまで、心電図RR間隔変動解析を用いて、様々な疾患の自律神経活動の特徴を検討してきた。心電図RR間隔の解析では,変動に関与する周波数成分を抽出することで交感神経成分および副交感神経成分の強度をみる周波数領域解析frequency-domainが可能である。高周波成分high frequency(HF)が副交感神経系の指標として、また低周波成分low frequency(LF)をHFの副交感神経系成分で除したL/H比が交感神経系の指標として定量的評価に用いられる(丹羽、栗山.自律神経機能検査 第5版(日本自律神経学会編)。今回、上記心拍変動の解析を介して臓器連関の評価を行い、得られた臨床研究の成果を例示して紹介する。
○【話題1:睡眠という側面からの骨老化について】
骨代謝は、加齢に加えて、さまざまな要因が密接に関連していることが明らかとなっている。我々は、交感神経活動を含め、睡眠と骨量の関連について調査を実施した。住民検診受診者221名を対象に、一日睡眠時間が6時間未満群、6時間以上群の2群に分けて、心拍変動解析(きりつ名人)を用いたHRV自律神経活動、超音波パルス透過法による皮質骨厚と海面骨骨密度、骨代謝関連マーカー、血中レプチン値について検討した。
【結果】 上記2群間で有意差を認めたのは、皮質骨厚と血中TRACP-5b、血中レプチンであった。心拍変動解析のL/H 比は、6時間未満群で亢進が認められた。皮質骨厚とL/H ratio、皮質骨厚と血中レプチンの間には、有意な負の相関、逆に、血中レプチンとL/H ratio の間には、有意な正の相関を認めた。
【結論】 ヒト短時間睡眠が、骨代謝の負の因子であること、レプチン-交感神経系による骨量調節の変化があることが示唆された (Kuriyama N, Inaba M et al. Arch Gerontol Geriatr. 2017.70)。

○【話題2:非変性疾患における自律神経障害ー“治る認知症”特発性正常圧水頭症ー】
非変性疾患における認知症状を呈する疾患の一つとして、特発性正常圧水頭症(iNPH:idiopathic normal pressure hydrocephalus)を取り上げる。iNPHは、シャント手術という治療法が先に見出される一方、“特発性”という名前が示す通り、本疾患の根本的な成因や病態がまだ解明されていない一面を併せ持つ特徴ある疾患である。
【結果および結論】 我々は、 24時間ホルター心電図を用いた心拍変動パワースペクトル法で検討したところ、iNPH (n=18名)は、コントロール群(n=31名)に比して、副交感神経活動の亢進が有意であり、それらは脳脊髄液排除やシャント手術後に正常レベルに回復することが明らかとなった(Kuriyama N, et al. Clin Auton Res 2008.18)。
【今後について】 さまざまな疾患には、多様な多臓器連関が存在することが明らかとなってきている。自律神経評価HRVでのアプローチも、まだこれから活用されるべき研究分野であり、更なる臨床研究での取組みが期待される。

*会場書籍コーナー(クロスウェル蔵書自律神経に関する書籍)でご紹介させていただきました。
日本自律神経学会より発行。栗山先生も執筆しています。

 

総括として

「心拍の自律神経調節:進化論的考察」 黒岩義之先生(横浜市立大学・名誉教授/日本自律神経学会 前理事長)

黒岩義之1),平井利明2)

1)財務省診療所長 / 横浜市立大学名誉教授 / 日本自律神経学会 前理事長 / 帝京大学医学部附属溝口病院神経内科客員教授・脳卒中センター長
2)帝京大学医学部溝口病院神経内科准教授

1.心拍は自律神経系の「窓」
2.心拍は辺縁系の「窓」→心拍は心の窓

A.心臓血管系(中胚葉臓器)の進化
1.心臓も血管もない動物
(1)外胚葉だけしかない一胚葉性動物:扁形動物、線形動物、海綿動物
(2)外胚葉と内胚葉だけしかない二胚葉性動物:刺胞動物(クラゲ)
2.心臓はないが血管がある動物
幼少期のみ左右相称の三胚葉性動物:棘皮動物(ヒトデ、ウニ)
3.心臓(横紋筋)と血管が共にある動物
左右相称の三胚葉性動物:前口動物(無脊椎動物)と後口動物(脊  椎動物)
(1)神経原性心臓(心臓神経節に心臓ペースメイカー)と開放性血管系(毛細血管がない)を特徴とする動物
節足動物(カブト蟹、海老、蟹、蜘蛛、サソリ)
(2)筋原性心臓(心筋に心臓ペースメイカー)と開放性血管系 (毛細血管がない)を特徴とする動物
節足動物(カブト海老のみ)、昆虫、軟体動物(頭足類以外。二枚貝など)、原索動物(ホヤ)
(3)筋原性心臓(心筋に心臓ペースメイカー)と閉鎖性血管系 (毛細血管がある)を特徴とする動物
軟体動物(頭足類のみ;タコ)、環形動物(ミミズ)、脊椎動物

B.心臓の形態の進化
1.血管型:昆虫、原索動物(ホヤ)
2.2室型(1心房、1心室):軟体動物、魚類
3.3室型(2心房、心室):両生類
4.心室中隔が不完全な4室型(2心房、2心室):爬虫類
5.心室中隔が完全な4室型(2心房、2心室):鳥類、哺乳類
➡肺循環(左の心房・心室)と体循環(右の心房・心室)が機能的に独立

C.心臓の自律調節の進化
1.節足動物
心臓興奮性神経伝達物質(アセチルコリン、セロトニン)
心臓抑制性神経伝達物質(GABA、ヒスタミン)
2.軟体動物
心臓興奮性神経伝達物質(セロトニン)
心臓抑制性神経伝達物質(アセチルコリン;ニコチン受容体)
3.脊椎動物
心臓興奮性神経伝達物質(ノルアドレナリン;β受容体)
心臓抑制性神経伝達物質(アセチルコリン;ムスカリン受容体)

D.血管平滑筋の自律調節の進化
1.節足動物;血管は筋肉を持たない
2.軟体動物
血管収縮性神経伝達物質
(前行大動脈➡セロトニン、グルタミン酸、
胃食道動脈・腹大動脈 ➡アセチルコリン)
血管拡張性神経伝達物質(アセチルコリン)
3.脊椎動物
血管収縮性神経伝達物質(アセチルコリン;ムスカリン受容体)
血管拡張性神経伝達物質(ノルアドレナリン;α受容体)
血管収縮性ホルモン (アンジオテンシンII、セロトニン、エンドセリン、ニューロペプチドY)
血管拡張性ホルモン(NO、ヒスタミン、キニン、サブスタンスP、VIP、CGRP)

E.心臓血管系に影響を与える“無脊椎動物➡脊椎動物”の進化
1.赤血球:無➡有
2.微小循環:無➡有
3.血液脳関門:無➡有
4.神経管が腹側、消化管が真ん中で、心臓(背血管)が背側
➡心臓が腹側、消化管が真ん中で、神経管が背側
5.免疫系:自然免疫➡自然免疫/獲得免疫

F.心臓血管系に影響を与えるヒトの進化論的問題
1.直立歩行
2.高次脳機能活動
3.社会的ストレス
4.高齢者の機能低下

閉会挨拶  藤井智恵子(臨床自律神経機能Forum事務局 株式会社クロスウェル)

 

 

 

 

司会  有村知里様 (有村コンサルティングオフィス

 

 

 

 

受付

林辺順子先生(神奈川歯科大学)
井出桃先生(神奈川歯科大学短期大学部特任教授)
章麗霞様(神奈川県よろず支援拠点)
角田晃先生(神奈川歯科大学短期大学部准教授)(左から)

 

■お忙しい中全国各地からお越しいただきありがとうございました。

■協賛企業の皆様 ありがとうございました。(敬称略)

・株式会社エー・アンド・デイ
・コニカミノルタ株式会社 BIC Japan
・バイオトロニックジャパン株式会社
・フクダ電子株式会社
・富士ゼロックス株式会社
・株式会社ヴェルツ
・ユニオンツール株式会社

■会場設営では川崎市産業振興財団の皆様に大変お世話になりありがとうございました。

 

お陰様で平成29年11月18日(土)第1回臨床自律神経機能Forumを盛会のうちに終えることができました。座長・講師の方、ご参加いただきました皆様、協賛企業の皆様、有志の皆様、ご協力いただきました全ての皆様にお礼申し上げます。ぜひ3回目も、というお言葉を多くいただき、大きな励みになっております。

臨床自律神経機能Forum 事務局 株式会社クロスウェル 藤井智恵子