「第1回臨床自律神経機能Forum」抄録

■木村 穣、玉ノ井厚子、家村眞理子、高尾奈那、宮内拓史   関西医科大学健康科学センター

【目的】
肥満患者の自律神経機能を安静座位および立位負荷時の心拍数周波数解析から評価した。

【方法】
対象は当院肥満外来受診者のうちBMI30以上、心疾患、重症糖尿病および自律神経機能に影響を及ぼす薬剤を服用していない50名。自律神経機能評価として自律神経活動CVRR(R-R間隔変動係数)、交感神経活動指標L/H(0.04-0.15HZ低周波成分(LF)/0.15-0.40Hz高周波成分(HF)を用いた。年齢、BMI、DEXA法(二重X線吸収測定法)体組成、臍部CTによる内臓・皮下脂肪面積、PWV(脈波伝播速度)、心肺運動負荷試験によるAT(嫌気性代謝閾値)・peakVO2(最高酸素摂取量)、インスリン抵抗性指標HOMA-Rと比較検討した。周波数解析には「起立名人」(クロスウェル社)を用い、安静座位3分後に起立負荷施行、立位保持3分間施行し、安静座位1分・立位保持後1分(立位後)のデーターを用いた。

【結果】
男性15例、女性36例、平均年齢45.8±14.6才、BMI37.4±6.2、内臓脂肪面積178.3±66.5、 HOMA-R2.8±2.0であった。肥満において安静時CVRRは年齢(r=-0.29)、内臓脂肪面積(r=-0.32)と有意な負の関係を認めた。立位負荷によりCVRRは増加するが、その増加量は年齢とともに低下し内臓脂肪面積とさらに有意な負の相関(r=-0.50)を認めた。しかし一部内臓脂肪の増加にて増加する例も認められた。立位後のCVRRの変化量は、PeakVO2と負の相関(r=-0.36)を認めた。立位後のL/HはHOMA-Rと正の関係(r=0.25)を認めた。

【総括】
肥満患者の心拍数周波数解析から求められる自律神経指標は、内臓脂肪の増加で低下し、起立負荷の変化も内蔵脂肪の増加で低下した。ただし起立負荷の反応は同じ内臓脂肪量でも異なることより、その他の影響についても検討する必要があると考えられた。

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