起立負荷を用いた心拍変動解析による介入評価の可能性― 水素水摂取研究を一例として ―

心拍変動解析は、安静時の自律神経機能を評価する方法として広く用いられています。
一方で、食品・飲料・運動・入浴など、日常生活に近い介入では、安静時の心拍数やHRV指標だけでは変化が明確に捉えられない場合があります。
自律神経機能は、安静時の静的な状態だけでなく、姿勢変化や活動開始などの負荷に対して、どのように反応し、どのように調整されるかという動的な側面を含んでいます。
そのため、介入評価においては、安静時の値に加えて、負荷に対する反応性を見ることが重要な視点となります。
起立負荷は、日常動作に近い簡便な生理的負荷であり、循環調節や自律神経応答を評価する方法として活用できます。
起立時には、心拍数の上昇、迷走神経活動の抑制、交感神経系の相対的な賦活などが関与するため、安静時指標だけでは見えにくい自律神経反応を検討することが可能になります。
今回、慶應義塾大学の村本先生らの研究グループによる水素水摂取研究を一例として、起立負荷を用いた心拍変動解析による介入評価の視点を紹介します。

目次

安静時HRVだけでは見えにくい「反応性」

介入前後の評価では、安静時の心拍数、CVRR、HF、LF/HFなどの指標を比較することが一般的です。
しかし、安静時の値に大きな差がみられなくても、起立時や立位保持時の反応には違いが現れる可能性があります。
たとえば、同じ安静時HRVであっても、起立時に適切に心拍数が上昇するか、迷走神経活動が抑制されるか、立位中に循環調節が維持されるか、着席後にどのように回復するかによって、自律神経の調整状態は異なります。
このような「反応性」や「調整過程」を評価することで、安静時指標だけでは捉えにくい介入前後の変化を検討できる可能性があります。

水素水摂取研究を一例として

村本先生らの研究では、水素水摂取に関連して、安静時だけでなく、起立負荷時の心拍変動指標の変化にも着目されています。この研究の意義は、水素水の効果を単純に断定することではなく、介入前後の自律神経反応を、起立という軽い生理的負荷を用いて検討している点にあります。
安静時の数値だけでなく、起立時や立位中の反応を見ることで、食品・飲料などの日常生活に近い介入が、自律神経の反応性や調整過程にどのように関わる可能性があるかを検討できます。
この視点は、水素水に限らず、食品、飲料、入浴、運動、リハビリテーション、睡眠改善、メンタルヘルス支援など、さまざまな介入評価にも応用できる可能性があります。

図:起立負荷測定による介入評価の例

※本図は、慶應義塾大学の村本先生らの研究グループよりご提供いただいた、きりつ名人を用いた起立負荷測定の解析結果資料をもとに、クロスウェルにて紹介用に一部再構成して掲載しています。

参考論文
Muramoto Y, Minaguchi E, Sugai K, et al.
Hydrogen-rich water has a positive effect on heart rate variability at rest and during orthostatic loading, but not during cycling, in healthy adults: A pilot randomized, placebo-controlled crossover trial.
Heliyon. 2026; e44678.
DOI: 10.1016/j.heliyon.2026.e44678

起立負荷HRVを介入評価に用いる意義

起立負荷を用いた心拍変動解析では、安静時、起立時、立位保持時、着席後といった一連の変化を確認できます。
これにより、単一時点の安静時HRVだけでなく、
・負荷に対する反応
・立位中の調整
・着席後の回復
といった動的な自律神経機能を評価することが可能になります。
特に、日常生活に近い介入では、安静時に明確な変化が現れにくい場合があります。
そのような場合でも、姿勢変化に対する反応を見ることで、介入前後の身体の調整状態を検討する手がかりとなる可能性があります。

心拍変動解析手法について

きりつ名人では、心拍変動解析にMEM(最大エントロピー法)を用いています。
短時間の心拍間隔データから周波数成分を推定し、姿勢変化に伴う自律神経反応を評価するための解析手法として活用しています。
▶MEM(最大エントロピー法)について

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本内容は、meijin倶楽部にも、きりつ名人の活用事例として掲載しています。

▶きりつ名人を用いた起立負荷による介入評価

おわりに

起立負荷による心拍変動解析は、安静時HRVだけでは捉えにくい自律神経反応性を評価する一つの方法です。
今回の事例は、日常生活に近い介入評価において、安静時の値だけでなく、負荷に対する反応や調整過程を見ることの重要性を示すものと考えられます。
臨床自律神経機能Forumでは、今後も、心拍変動解析や起立負荷試験を活用した自律神経機能評価の研究・臨床応用について、関連する知見や事例を紹介していきます。

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