第4回臨床自律神経機能Forum


平井利明1),黒岩義之1)
1) 帝京大学医学部附属溝口病院脳神経内科・脳卒中センター

皮膚組織は主に表皮組織,真皮組織,皮下組織に分類される.末梢神経の最遠位部がどこであるかは長年不明とされてきたが,1989年に軸索マーカーであるprotein gene product 9.5(PGP9.5)に対する抗体作成をきっかけに,1990年代に本抗体を用いた免疫組織化学と共焦点レーザー顕微鏡による解析技術の組み合わせから,豊富な神経線維が表皮内組織にまで達していることが証明された.この方法の普及により,small fiber neuropathy(SFN)の診断に有用であることが表皮内神経の脱落をもって示された.皮膚生検によるSFNの評価として,様々な疾患が対象となる.例えばシェーグレン症候群や糖尿病性末梢神経障害は1990年代から皮膚生検により証明されていたが,近年線維筋痛症のように多彩な症状を伴う疾患でもSFNを呈するとされる.フォーラムでは正常皮膚組織での神経走行(図1,図2)や,皮膚生検によりSFNと診断された9症例をご紹介する(図3に表皮内神経密度が高度に低下していた線維筋痛症の症例を示す).この9症例はいずれも神経内科外来で行われる神経伝導検査では正常所見であった.さらに線維筋痛症と診断された12症例(34歳~58歳,女性10名)においてきりつ名人を行い,その主な所見は安静時CVRR低下(67%),CVRR反射正常(83%),起立時交感神経基礎活動亢進(58%),起立時交感神経反射正常(75%),安静時副交感神経基礎活動低下(75%)であった(典型例を図4に示す).線維筋痛症のようにヒステリーと診断されうる症例に皮膚生検やきりつ名人は有用になるであろう.