第4回臨床自律神経機能Forum

井上 裕之1)5) 長谷 則子2) 井出 桃3) 李 昌一4) 角田 晃3) 宮城 敦3)小松 知子5) 関端 麻美3) 西村 康3) 長谷 徹3) 柿木 保明6)
1) 国立病院機構 久里浜医療センター 歯科 2) 神奈川歯科大学 歯学部  3) 神奈川歯科大学短期大学部 4) 神奈川歯科大学大学院横須賀・湘南地域災害医療歯科研究センター・ESR研究室5) 神奈川歯科大学大学院全身管理医学講座障害者歯科学分野 6) 九州歯科大学 老年障害者歯科学分野

【はじめに】
 本邦において、2014年「アルコ-ル健康障害対策基本法」が施行され、2016年には「アルコ-ル健康障害対策推進基本計画」が閣議決定、各都道府県に推進計画の策定が伝達され、各地区で、飲酒に伴うリスクについての普及が広がりつつある。
我々は、アルコ-ル関連障害群患者において、歯科治療時における自律神経解析することにより、さまざまな血圧変動や大きな脈拍変動が発症することを発表してきた。
今回は、治療前の自律神経機能評価とその後の心拍数変化等を見ることによって、循環器系への変調の兆しを速やかに発見し、歯科治療時の危険性回避に効果的なプログラムを提示したい。
【方法および対象】
 歯科治療前、起立負荷試験による自律神経・循環の状態・反応を評価。一部歯科治療中、脈拍連続測定、
血圧随時測定。(クロスウェル社製 血圧・心拍変動解析ソフトmeijin きりつ名人 治療名人使用)
 対象は、平成22年5月~平成26年4月までに久里浜医療センタ-歯科に受診し、アルコ-ル関連障害で
入院経験ある男性患者40症例。平均年齢46.5歳、なお、そのうち31例は歯科治療中連続測定ができた
ものである。
 一方、比較デ-タとして用いたのは企業等で測定した男性243名のデ-タであり、平均年齢48.4歳であった。
【結果】
 患者群は安静心拍数が速く、安静自律神経活動(CVRR)安静副交感神経(ccvHF)・交感神経(ccvL/H)、
交感神経反射(ccvL/H 起立―安静)が一般群と比べて低い傾向がみられた。
 患者群は、安静時自律神経活動CVRRの低下(予備力低下)の比率が高い状況がみられた。
 治療中の心拍数は変化していることが認められた。
 治療前起立時の心拍数が速い症例は治療時最大脈拍数も速い傾向にあることが見られた。
【結論】
 アルコール関連障害群患者では自律神経系の不調により様々な症状が発現しやすい。
また、歯科治療中は心拍数の変化にみられるように循環器系への変調も起こりやすい。
治療前の自律神経機能評価は、体調把握のための有効な情報であることが示された。
さらに、セルフモード・問診機能を取り入れることにより、歯科臨床での危険回避効果的を向上させたい
と考えている。