第4回臨床自律神経機能Forum

三輪 徹
公益財団法人田附興風会医学研究所 北野病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

自律神経系と前庭系の間には、前庭自律神経反射経路が存在しており、前庭刺激を受けた際には自律神経機能異常が引き起こされる。また、自律神経機能が減弱している者は、めまい症状が増強・遷延化しやすいことも知られている。今回我々は、前庭系と自律神経系の関連性をより明らかとし、めまい発症時の自律神経症状を抑制するために必要なことについて考察を行う。
対象は、めまいを主訴にJCHO熊本総合病院耳鼻咽喉科を受診した50歳以上の患者のうち、一連の平衡機能検査を行い、メニエール病と診断した29名。コントロールにはめまいの既往を持たない50歳以上の健常人36名とした。クロスウェル社のきりつ名人を用い、耳鼻咽喉科でよく使用されるSchellong試験の方法に従って起立試験を行い、血圧、脈拍、CVRR、HF、LF/HFの値を得た。
過去のメニエール病患者における報告では、副交感神経活動度が低下しており起立時や立位時に交感神経反射が相対的に大きく認められるとされていたが、今回の検討では副交感神経活動度の低下は見られず、起立時の交感神経反射上昇が認められるのみであった。メニエール病患者では、交感神経反射に対する反応性が低下しているという報告があり、血圧脈拍の大きな変化を抑制するためにこのような反射系にシフトしていると推測した。
耳鼻咽喉科においては、これまで起立試験時に血圧、脈拍のみしか計測せず副交感神経系の評価については行わないことが多かった。今回、心拍変動であるCVRR、HFやLF/HFを計測することで、薬剤負荷試験などを行わずにめまい患者における副交感神経系を評価できた。めまい発作時の自律神経症状を軽減するためには、発作時の交感神経系の抑制が有効な対策と考えられた。