久島達也
帝京平成大学大学院健康科学研究科  教授
帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 教授

鍼は、身体表面に接触又は穿刺刺入により皮膚や組織を損傷させ、生体に一定の機械的刺激を与え、様々な生体反応を生じさせる器具として鍼灸治療で用いられてきた。これまで、我々は、ヒト三叉神経眼枝の分布する前頭部に鍼を刺入し、その鍼に電気を流す鍼通電刺激が作業記憶をはじめとする認知機能などを司る前頭前野領域のヘモグロビン(Hb)量や機能に及ぼす影響を検討してきた。その結果、低周波鍼通電刺激が(1)HF成分を亢進させ、心拍数を減少させること、(2)前頭前野領域のOxyHb量を増加させること(3)前頭前野領域のOxyHb量の増加には、刺激を明瞭に感じる電流量による刺激が有効であること、(4)暗算課題時に特に左前頭極OxyHb量を増加させることで解答の集中度やしやすさを向上させることなどを確認してきた。
本フォーラムでは、これらに関して実技を踏まえ解説すると共に、鍼による三叉神経眼枝への体性感覚刺激が脳血流や自律神経系を調節する可能性について紹介する。