田中 遥1)2)、石井 遼1)、胡 愛玲3)、山口 琢児3)、小林 弘幸2,3)
医療法人ベスリ会 ベスリクリニック1)
順天堂大学医学部病院管理学2)、漢方先端臨床医学3)

【初めに】
 うつ病患者は抑うつだけでなく、頭痛、動悸、めまい、倦怠感などの自律神経症状も呈する。現在うつ病治療においては、薬物療法だけでなく経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation: TMS)治療での効果も立証され臨床応用されている。しかしTMS治療にともなう自律神経機能の変化について検討された論文は少ない。今回休職中にTMS治療をうけた症例について自律神経機能を測定し、TMS治療が自律神経活動に及ぼす影響について検証した。

【方法】
 休職中の患者1名に対しT M S治療を計20回実施
 抑うつ状態(SDS) 初診、5回目、10回目、15回目、20回目に測定
 気分プロフィール調査(POMS2) 初診、20回目に測定
 自律神経機能検査(きりつ名人:株式会社クロスウェル)初診、10回目、20回目に測定
 唾液中コルチゾール 初診、5回目、10回目、20回目に測定

 

 

【【結果】
 抑うつ状態(SDS):初診日から20回目にかけて低下した
気分プロフィール調査(POMS2):ネガティブ項目であるAH(怒り-敵意)、CB(混乱-当惑)、DD(抑うつ-落ち込み)、FI(疲労-無気力)、TA(緊張-不安)は低下、ポジティブ項目であるVA(活気-活力)、F(友好)は上昇した。
自律神経機能検査:初診日から20回目にかけて安静CVR-Rは低下、安静ccvL/Hは低下、ccvHFは上昇した。
唾液中コルチゾール:初診日から5回目にかけてコルチゾール値は上昇したが、10回目、20回目にかけて低下を認めた。

【考察】
 TMS治療により抑うつ症状を含む気分の回復を認めた。また、交感神経活動の低下ならびに副交感神経活動の上昇がみられ、TMS治療により自律神経活動が変化することが示唆された。本症例は一症例での検討であり、今後複数の症例数をもって検討する事が必須と考える。