株式会社クロスウェルは2003年の創設で、自律神経機能検査機器に特化した会社です。先代の故 永谷基社長には、ご生前に数回、お会いいたしましたが、私が「計算負荷で心拍変動はどうなるんだろう?」とか「音楽の長調と短調で聞いた時の心拍変動はどう違うんだろう?」とか、単なる思い付きでお話したときに、眼を輝かせて話を聞いて下さったことが印象的でした。故 永谷社長は素晴らしい「研究マインド」の持ち主でした。「第1回臨床自律神経機能Forum」(2016年11月27日)は、まさに故永谷社長の遺志を継いで、立ち上げられたといっても過言ではないでしょう。
株式会社クロスウェルの藤井智恵子さんが立ち上げた「第1回臨床自律神経機能Forum」は私も参加いたしましたが、8題の講演と7題のポスターからなり、レベルの高いプログラムで、BGM音楽も流れるなか、多数の参加のもと盛会裏に終わりました。抄録集の付録の記事もイラストが豊富で、教育的で勉強になる内容でした。今回、「第2回臨床自律神経機能Forum」(2017年11月18日)が開催されるにあたり、第1回を凌駕する内容の企画が繰り広げられることを期待しております。
私は今年で61年目を迎える日本自律神経学会の前理事長で、国際自律神経学会2017(2017.8.30.~9.2.)の大会長でしたが、日本の「自律神経機能」の研究は、世界に誇るだけの歴史があります。   「自律神経機能」は人間の生命を支えています。人間を含めた生物は概日時計をもち、恒常性(ホメオスターシス)を保持し、体内器官の自動的制御を行っています。このような生命活動は、岩石やヒトが作った機械など無生物にはありません。地球史の流れの中で生命の進化とともに、「自律神経機能」の活動を統合的に制御するシステムが発達を遂げました。概日時計システム、次いで内分泌代謝・消化・排泄・呼吸・循環・発汗・免疫・情動の各システムが次々と自律神経系に組み込まれました。結果、全身の「自律神経機能」の活動が統合的に制御されるようになりました。「自律神経機能」のシステムは最も基本的で、かつ絶対に欠かせないものです。万が一その働きを失えば生命にかかわる調節系であり、生命神経系とも呼ばれます。
「自律神経機能」の研究分野はきわめて多くの領域にわたっています。「自律神経機能」は人間の全身に関わるみんなの学問対象です。基礎医学・臨床医学を問わず、東洋医学・西洋医学を問わず、診療科を問いません(神経内科、消化器内科、高血圧・循環器・腎臓内科、糖尿病・内分泌代謝内科、呼吸器内科、神経眼科、泌尿器科、免疫・アレルギー科、肛門科、産婦人科、脳神経外科、精神科)。また、職種や卒前・卒後も問いません(医師、研究職、大学院生、鍼灸師、看護師、理学療法士、卒前医学生など)。幅広い領域に学際的に関わるのが「自律神経機能」というキーワードです。
第2回目を迎える「臨床自律神経機能Forum」が、自由で楽しい研究発表と意見交換の場としての役割を演じると同時に、「自律神経機能」の様々な障害に悩まれる方々の診療とその治療法の開発に貢献することを期待しております。「第2回臨床自律神経機能Forum」の成功を心より祈念して、巻頭言とします。

 2017年10月30日

黒岩 義之
横浜市立大学名誉教授 / 日本自律神経学会 前理事長