脇英彰1,2)、鈴木卓也1)、久島達也1,2)
1) 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2) 帝京平成大学東洋医学研究所
【目的】
 これまで、三叉神経第一枝(V1)領域に対する鍼通電(EA)が副交感神経活動を亢進させ、両側の脳血流量を増加させることを確認してきた。自律神経活動や前頭前野の血流量の低下は作業効率を低下させることから、本研究ではV1領域へのEAが作業効率、自律神経活動、前頭前野の血流量に及ぼす影響を検証した。
【方法】
 健常成人(男性5名、23.40±1.34歳)を無作為に無処置群とEA群に割り付け、クロスオーバー試験を実施した。試験前日は計算の慣れによるバイアスをなくすために計算課題(内田クレペリン試験)の練習を行い、当日は10分間の介入(無処置またはEA)、5分間の安静、その後に1分間の安静と計算負荷を交互に各5回繰り返すブロックデザインを実施した。また、介入後には介入前と比較した爽快感、計算課題後には練習と比較した作業遂行度をNRSにて評価し、作業効率を回答数と正答数にて評価した。EA群の介入はV1領域に相当する両側の眉毛内端と前髪際中央の外1.5cmに実施した。刺激周波数は100Hzとし、刺激強度は痛みの感じない程度とした。無処置群は介入を行わず座位安静のみとした。また、自律神経活動は、心拍数 (HR)から心拍のR-R間隔変動より低周波(LF)成分と高周波(HF)成分を解析し、LF/HFを交感神経活動、HFを副交感神経活動の指標として求めた。脳血流量は、前頭極部にプローブを装着し、近赤外分光法にて測定されるoxyHb量の変化とした。
【結果】
回答数と正答数は、無処置群と比較しEA群で増加(p<0.05)が示された。HR、LF/HF、HF、左右のoxyHb量は群間で差はみられなかった。また、介入後の爽快感と計算負荷後の作業遂行度は、無処置群と比較しEA群で高値(p<0.05)を示した。
【考察・結語】
 V1領域へのEAは計算課題時における主観的、客観的項目の改善が見られたことから、集中力や課題遂行能力に有用な介入となる可能性がある。