自律神経機能評価といえば、これまで多くの研究で安静時の心拍変動(HRV)が用いられてきました。
一方で近年、海外の研究では起立負荷(Active stand test / Head-up tilt test)を用いた研究が増えているように見受けられます。
姿勢変化に対する循環反応は、自律神経調節の重要な働きの一つであり、
安静時だけでは捉えにくい自律神経の反応性や循環調節能力に関する情報が含まれている可能性があります。
近年の研究動向をいくつか見てみましょう。
起立反応と長期予後
起立時の循環反応が将来の心血管イベントと関連する可能性が報告されています。
ある研究では、約4,300人を対象にActive stand test中の心拍・血圧変化を解析し、長期追跡との関連を検討しました。
その結果、起立時の循環反応パターンが将来の心血管疾患や死亡と関連する可能性が示唆されています¹。
この研究では、立ち上がり時の循環反応が神経循環調節機能を反映する指標となる可能性が議論されています。
起立後の心拍回復
起立後の心拍回復速度も、自律神経機能を反映する可能性があります。
起立後の心拍回復と運動負荷後の心拍回復を比較した研究では、
心拍回復の遅れが副交感神経機能低下や循環調節異常と関連する可能性が示されています²。
年齢による起立反応の違い
姿勢変化に対する循環反応は、加齢によって変化することが知られています。
Active standingを用いて若年者と高齢者を比較した研究では、
-
高齢者では血圧低下が大きい
-
心拍上昇が小さい
-
血圧回復が遅れる
といった特徴が観察されています³。
これらは加齢に伴う
-
血管機能
-
バロレフレックス
の変化を反映している可能性が指摘されています。
起立不耐・POTS研究
起立負荷試験は、起立性頻脈症候群(POTS)などの評価にも利用されています。
最近のレビューでは、
病歴とActive stand testを組み合わせることが診断に有用である可能性が示されています⁴。
起立反応を見るという視点
安静時HRVは自律神経活動の「状態」を示す指標として広く利用されています。
一方、起立負荷では
-
副交感神経の抑制
-
交感神経の活性化
-
循環調節反射
などが短時間のうちに起こります。
そのため起立負荷試験では
自律神経の反応性や循環調節能力
を観察することができる可能性があります。
今後の研究・臨床に
起立負荷試験は古くから知られている検査方法ですが、近年の研究では改めてその意義が見直されつつあるように感じられます。
安静時評価に加え、姿勢変化に対する循環反応を観察することは、自律神経機能を理解する上で新たな視点を提供する可能性があります。
起立負荷試験を用いた研究や測定を行うためには、再現性のある測定環境やデータ解析も重要になります。
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参考文献
-
van der Velde N, et al. Responses to active stand test predict 12-year incident cardiovascular disease and mortality.
Communications Medicine. 2025.
https://www.nature.com/articles/s43856-025-01253-3 -
Ruzieh M, et al. Heart rate recovery after orthostatic challenge and cardiopulmonary exercise testing.
Frontiers in Physiology.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10654531/ -
Shaw BH, et al. Short-term cardiovascular responses to orthostatic stress during active standing.
Journal of Clinical Medicine.
https://www.mdpi.com/2077-0383/14/20/7202 -
Raj SR, et al. Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome: State-of-the-Art Review.
Autonomic Neuroscience.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1443950625016543