起立負荷試験による機能評価(きりつ名人)
■起立負荷試験による機能評価(きりつ名人)
Autonomic reflex orthostatic tolerance test
心拍変動と自律神経機能の関連については、1980年代に心拍変動の研究が始まって以来、周波数解析した結果の成分毎に生理反応がある(Eckbergら)という説と、成分の比率によって生理反応がある(Millianiら)という二説に分かれています。
しかし両説とも、健常者の起立負荷に対する反応についのみは認め合っています。(潜水反応、圧受容器刺激などでは認め合っていません。)
健常者の起立負荷に対する自律神経反応を基本とし、起立負荷に対する自律神経の反応を評価することにより、自律神経の機能評価が可能になります。
人は日常の生活の中で一日数百回立ったり座ったりをしなければなりません。
この動作そのものを評価することは、日常生活上不可欠であり臨床的と言えます。
能動的起立はヘッドアップティルトに比し心拍数の上昇が大きく瞬時的で、能動的起立時の血液の下肢滞留に対する自律神経反応であり、自律神経機能評価に適しています。
起立すると重力負荷により、下肢および体幹の容積静脈への血液(1⁄2~1L)の貯留が起こります。
大動脈弓および頸動脈小体の圧受容体は, 速やかに血圧を正常化させる自律神経反射を促進させ、 交感神経を亢進、副交感神経を抑制することで、心拍数および収縮力を増大させ、容積血管を収縮させ、血圧を維持します。
立位を続けると, レニン- アンジオテンシン- アルドステロン系の活性化および抗利尿ホルモンの分泌により、 循環血液量の増加が起きますから、自律神経反射により、交感神経を抑制、副交感神経を亢進することで、心拍数および収縮力、 容積血管の収縮を安静化させ、立位に適した血圧を維持します。
【重力負荷による血圧の低下】
血圧の単位はmmHgです。1mmの水銀柱を押し上げる圧力が1mmHgです。
10cm高さが変わると100mm×1/水銀比重(13.6)≒7.4mmHg 血圧が上下します。
例えば身長170cmのヒトが座位から起立すると、心臓の位置が約45cm高くなります。
瞬間的に 450mm×1/13.6 ≒ 33mmHg血圧が下がります。
この瞬間的な血圧の陰圧を自律神経機能が働き、瞬間的に恒常を維持しているということです。