【腹筋運動と腹部電気刺激が自律神経機能に与える影響の比較】

◆三浦 美佐、 長坂 誠、 田中 紀晶、 伊藤 修、 上月 正博

東北大学大学院医学系研究科機能医科学講座 内部障害学分野

【目的】

下肢エルゴメータ等の運動療法や物理療法の一部は、自律神経機能改善効果を有することが報告されている。しかし、体幹運動や電気刺激による自律神経機能への影響については、明らかではない。本研究では、腹筋運動と腹部電気刺激が、自律神経機能に及ぼす影響を比較検討することとした。

【対象・方法】

28.1±6.8才の健常成人14名(男性8名、女性6名)を運動群5名、電気刺激群5名、対照群4名の3群に分け、運動群は腹筋運動(10回1セット×3セット、5日/週)、電気刺激群は腹部電気刺激(30分/1日、5日/週)をそれぞれ4週間実施し、介入前後で自律神経機能をMemCal法(短時間の心拍RR間隔データから心拍変動解析する方法)によって評価した。具体的には低周波数成分パワー(LF)、副交感神経活動の指標である高周波数成分パワー(HF)、交感神経活動の指標であるLFとHFの比(L/H)、自律神経総活動量(TP)を座位と立位で測定し、各群における介入前後の変化を比較検討した。

【結果】

介入開始前は、全ての群の、全てのパラメータに、群間差は認められなかった。心拍数は、介入前後及び群間の変化に差は認められなかった。HFは、電気刺激群で464→800(msec2)と有意に増加したが、対照群、運動群で有意な変化を認めなかった。L/Hは運動群で5.9→4.2と有意に減少したが、対照群、電気刺激群で有意な変化を認めなかった。TPは電気刺激群で6.4→8.5 (%)と有意に増加したが、運動群、対照群で有意な変化を認めなかった。

【結論】

腹部の運動と電気刺激は自律神経機能改善に有効であるが、運動と電気刺激は、それぞれ異なる自律神経機能改善作用をもつことが示唆された。

(第37回日本運動療法学会