心拍変動の歴史・今後の可能性
「第1回臨床自律神経機能Forum」抄録
■早野順一郎 名古屋市立大学大学院医学研究科
心拍のゆらぎ-心拍変動は人類にとって常に興味の対象であるらしく、最初の記載は紀元前300年頃のHerophilosまで溯る。現在の心拍変動時間領域の分析は1960年代にホルター心電図の開発とともに始まり、周波数領域の分析は1970年代にSayers, B. M.によって導入された。心拍変動は、自律神経の薬理学的除神経や心臓移植によって消失する。したがって、その起源は脳にあり、自律神経を介して心臓に伝達される。心拍変動には脳によって捉えられたストレスや、健康状態およびそのリスクが反映されており、心拍変動解析は、脳と心臓の間の交信状態やその内容を傍受する手段と考えることもできる。ICTの発達により、心拍情報を収集するデバイスやシステムが普及し、心拍のビッグデータも構築されつつある。また、新たな心拍変動解析法の開発は留まるところがない。心拍変動解析は心拍情報の活用ツールとして利用されることが多くなり、適切な分析法や解釈に関する研究の重要性が従来にも増して大きくなりつつある。