第4回臨床自律神経機能Forum

鳥羽梓弓、石川讓治、原田和昌
東京都健康長寿医療センター 循環器内科

【目的】 これまでの当院フレイル外来での研究においては、起立性低血圧は動脈エラスタンスと関連があり (Blood Press Monit. 2017)、起立性高血圧は基本チェックリストの下肢運動機能関連の点数と関連があった(Geriatr Gerontol Int.2019)。起立性低血圧や起立性高血圧と認知症との関連は明らかでなく、認知機能の評価方法によっても結論は様々である。そこで、起立性血圧変動と認知機能との関連を自律神経活動と共に評価した。

【方法】 当院フレイル外来に通院中の患者において、起立名人(Croswell社)を用いて安静座位、起立直後、立位1分後、着席時の血圧、脈拍、自律神経の変動を測定した。また、認知機能評価としてMMSE、HDS-R、MoCAの3通りを施行した。

【結果】 データが有効であった392名の患者のうち、起立性低血圧は50名(13%)、起立性高血圧は119名 (30%)に認めた。起立性低血圧、起立性高血圧はいずれの認知機能評価の点数とも関連を認めなかった。MoCA点数24点以下と25点以上に分けると、MoCA低値群は年齢が高く高血圧の既往が多かった。また、低値群では起立保持で血圧が上昇し着席時に低下した。自律神経機能で見ると、低値群では起立後の立位保持での交感神経の亢進が大きかった。MoCA点数と起立から立位での収縮期血圧の変化は負の相関を認めた。起立から立位での収縮期血圧の変化は年齢、性別、フレイルの指標である基本チェックリストの点数とは独立してMoCA点数と関連していた。