「執務者の生産性を推定する診断技術の開発」
第4回臨床自律神経機能Forum
堀田竜士,小村晃雅,涌井美帆子
富士ゼロックス株式会社 研究技術開発本部 コミュニケーション技術研究所
【目的】近年,生体センサーから得られた情報を活用し,企業などで働く執務者の業務の生産性を評価する試みが始まっている.しかし,執務者の業務は多岐にわたるため,生産性自体の評価は難しい.一方,高い生産性を発揮している執務者には,共通の執務状態が存在することが予想される.我々は,生産性と関係が深いと考えられる執務状態を診断し,執務者の生産性を推定する技術の開発を試みた.本稿は,開発した技術と診断結果の評価の概要を述べる.
【仮説】縦軸を集中度を示す「没入感」,横軸をリラックス度を示す「開放感」とし,2 軸 4 象限で執務状態を定義した(図 1).図 1 のスイスイの状態,すなわち没入感と開放感が共に高い時に,執務者は高い生産性を発揮すると定義した.診断には,縦軸は HR(bpm),横軸はHF(ms2)のゆらぎに基づいた独自の生理指標を用いた.これらの指標を用いて,就業時間中に採取した心拍変動データから執務者の状態を診断し,診断レポートを自動で作成する技術を開発した(図 2).
【診断結果の評価】企業 A に勤める 34 名の被験者(年齢:20 代から 60 代,性別:男性 27 名,女性 7 名)に対し,通常業務(デスクワーク,会議含む)を行った 1 日の診断レポートを見せ,診断結果がどの程度合っているかを評価してもらった.評価には 5 段階のリッカート尺度を用いた.結果は「1.全然合っていない(0%)」,「2.あまり合っていない(2.7%)」,「3.どちらともいえない(5.4%)」,「4.おおよそ合っている(29.7%)」,「5.かなり合っている(62.2%)」となり,4,5 の肯定的な回答を行った被験者が全体の 91.9%を占めた.
【考察】生体指標を用いて執務者の状態を診断した診断レポートに対して,9 割以上の被験者から肯定的な回答を得た.今後は診断に用いた生理指標と生産性との関係を明らかにしていく.