心不全患者における運動中の心拍変動解析
勝俣良紀
慶應義塾大学循環器内科
心不全患者に対して有酸素運動は推奨される。本研究では、心不全患者で運動中の心拍変動解析により嫌気性代謝閾値(AT)を予測できるか検討した。当院で心肺運動負荷検査(CPX)を施行した有症候性心不全患者67名において、最大エントロピー法による心拍変動解析を用いてCPX中の高周波成分(HF)を連続的に評価した。安静時HF10をcutoffとし、患者背景を2群間で比較した(38名[高HF群;HF≧10] vs. 29名[低HF群;HF<10])。運動中HF<5(10秒以上持続)を心拍変動閾値(HRVT)と定義し、HRVTとAT時点での酸素摂取量(VO2)の関連を検討した。β遮断薬投与量や左室駆出率などには両群間で違いは認めなかったが、年齢・心拍数・BNP値・推定肺動脈圧・VE-VCO2 slopeは低HF群で有意に高い傾向にあった。低HF群では全例ではHRVTは評価できなかったが、高HF群ではHRVT-VO2とAT-VO2との間に高い相関を認め、系統誤差は認められなかった。比較的若年かつ心不全代償例を示唆する高HF群では、単誘導心電図を用いた運動中のリアルタイム心拍変動解析で簡便にATを推定することに成功した。